今回のリニューアルにより、JCBは「今風のポイントシステム」への転換を果たした。1ポイント=1円という分かりやすさと、翌月ボーナス付与という即効性は、確実にユーザー体験を向上させるだろう。しかし、課題も残されている。
・利用場所の拡大という壁
最大の課題は、コード決済サービスMyJCB Payの認知度と利用可能範囲である。MyJCB Payは共通コード(Smart Code)を採用しているため、確かに「MyJCB Payが使えます」と明示されていない店舗でも実際には利用できる。しかし、それを知らないユーザーも多いのが現実だ。
この点で参考になるのが、三井住友カードのVポイントの戦略である。VポイントPayはVisaプリペイドカード相当の仕組みを採用することで、Visa加盟店全店での利用を可能にした。ECサイトではカード番号を使った決済が可能で、Apple PayやGoogle ウォレット経由でのタッチ決済にも対応している。ポイントをいったん残高にチャージする手間はあるものの、「利用できる場所」という意味では最も広範囲をカバーしている。
・共通ポイント化という戦略選択
さらに今後の戦略のテーマとなるのが「共通ポイント化」への対応だ。ポイント経済圏の歴史を振り返ると、単独での発展には限界があることが見えてくる。
Vポイントは、ポイント還元率という点で当初から尖ったサービスを提供していたが、ユーザー間での認知度や話題性はなかなか広がらなかった。しかし2024年4月のTポイントとの統合以降、状況は一変した。メディアで取り上げられる機会が増え、ユーザーの関心も大きく高まり、統合の効果は明らかだった。
現在最も勢いのあるPayPayポイントも、外販によって成長を加速させようとしている。6月23日からは東北地方と栃木県・茨城県に約400店舗を展開しているドラッグストアチェーン「薬王堂」が「PayPayポイントアップ店」となり、PayPay以外の決済方法でもPayPayポイントの付与を始めた。PayPayからポイントを購入し、自社サービスの利用時にPayPayポイントを付与できる仕組みだ。
J-POINTは、現時点でJCBに限定されたポイントプログラムとして設計されている。他社提携によって新たな共通ポイントの1つになる可能性もあれば、JCBブランドの強みを生かした独自路線を貫くという選択肢もある。
クレジットカードにおいて、ポイントシステムはいまや決済サービスにおける大きな差別化要素となっている。年間取扱高50兆円規模を誇るJCBが提供するポイントプログラムが最新版になろうとしている今、その提携戦略次第では業界の台風の目となる可能性を秘めている。
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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