ペアーズは“運命”を届けられるのか 韓国で仕掛ける出会いの再定義(4/4 ページ)

» 2025年06月26日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]
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韓国へ本格進出 現状の課題は

 ユーザー数を増やし、より多くの人に価値を届ける目的で、ペアーズは2025年春からアジア展開を開始。3月6日に韓国でのサービス提供を始めた。2017年にも韓国に進出したが、時期尚早だったために撤退した経緯がある。なぜ、このタイミングでの再参入だったのか。

ペアーズによると、韓国の若年層人口は日本の約2分の1、マッチングアプリの市場規模は約4分の1で、市場成長可能性は2倍だという(エウレカ提供、以下同)

 「2017年の進出時は、韓国向けアプリを新たに開発して実験的にサービスを開始しました。結果、『アプリで真剣なお付き合いの相手を探しましょう』というメッセージが刺さらなかった。通常マッチングアプリ市場は、『今日会いませんか?』といったカジュアルなものから広がります。

 韓国も同様で、カジュアルなものが浸透した後に、最近になって真剣な出会いを目的としたエリート向けのマッチングアプリが出てきました。アプリで結婚相手を探すという動きが明確に出てきたので、本格進出を決めました」

 韓国進出にあたり、約1年半かけて既存アプリのシステムを改修して、One app(一つのアプリ)でサービスを提供できるようにした。ローカライズ戦略では、韓国市場に適した本人認証システムやUIを採用したほか、「本音マッチ」の項目も変えた。「ケンカした時の対処方法は?」「信仰に対する考え方は?」「未来への備え(貯蓄)と現在の生活(消費)のどちらに重きを置くか?」などだ。

 これまでの反響を聞くと、計画どおりに新規ユーザーの獲得ができているという。ユーザーの年代は日本同様に20代が中心だが、男女比は、日本の「男性6:女性4」(2023年時点)よりも男性の割合が高いという。

リリースにあたり、インフルエンサーと組んでプロモーションを実施した

 「韓国のマーケティングでは、『本音マッチが3つとも一致する人は(統計学的に)0.1%の確率である』として、『運命の人に出会いましょう』というメッセージを打ち出しています。現地で知名度の高いインフルエンサーの方と組んで、街中でラッピングバスを走らせるなどのプロモーションを実施しました」

 関心の高さには手応えがある一方で、ユーザーが少ないためマッチングしづらいのは課題だ。現在は、第2弾の施策を検討しているという。

 「マッチングアプリは大型連休の直前や最中に登録者が増えます。韓国では10月初旬に大型連休があるので、そこでどの程度の規模の投資をするかが見極めどころです。投資すればユーザーが増え、口コミも増えますが、もしマッチングできないという声が広がってしまうと逆効果になります。慎重な判断が求められます」

 こども家庭庁の2024年度の調査によると、既婚者が配偶者と出会った場所・機会は「マッチングアプリ」(25.1%)が最多で、「職場や仕事関係、アルバイト先」(20.5%)よりも上回った。国内トップレベルのシェアを誇るペアーズは、韓国でも運命の出会いを生み出せるのか。

著者プロフィール:小林香織

 1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や2020年〜約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月〜は東京拠点。

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