大手メーカーとのビール開発はあきらめたわけだが、なぜドンキはビールづくりに魅力を感じたのか。
大きなきっかけのひとつに、2024年に発売したクラフトビールの売り上げが好調なことが挙げられる。パッケージに「今日はドのビール?」と書かれたクラフトビールは4種類あって、まとめ買いの需要が高い。「4本で〇〇円」といった売り方をすると、売り上げがぐーんと伸びる。つまり、飲み比べを楽しんでいる人が多いようだ。
クラフトビールを開発しているところは多いが、「成功した!」と言えるところは少ない。にもかかわらず、井上さんによるとドンキのクラフトビールは「大手メーカーの人気銘柄よりも売れている」そうだ(もちろん、店内に限っての話である)。
その要因として、価格がある。一般的なクラフトビールは、350ml缶で300〜500円のモノが多い。ドンキのクラフトビールは200円台ということもあって、若者を中心に人気が広がっているようだ。
また、ここ数年の酒税改正も気になる出来事である。税制の変更によって、ビールの価格は下がるものの、発泡酒や新ジャンルは上がっていく。こうした未来は見えているので、このタイミングを逃すわけにはいかない。このような背景から、ドンキはビール開発をあきらめきれなかったのだ。
では、なにがきっかけで、ビール開発が前に進んだのか。クラフトビールの工場はベトナムにある。井上さんがそこで目にしたのは、モノクロ缶だった。シンプルなデザインで印刷すれば、インクコストを削減できるのではないか。試作品をつくったものの、社内からは疑問の声があがった。
「ビール缶のデザインは重要でしょ。それも含めて楽しむものだから」「地味すぎる。本当に売れるの?」と厳しい声が飛び交った。ドンキのPB商品には、“文字ぎっしり”のモノが多い。例えば、3種類の味が楽しめる柿の種には、パッケージに300文字以上の説明が書かれている。
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