沖縄DXプロジェクトでは、サステナビリティの観点から興味深い取り組みがもう一つある。沖縄農業の基幹作物であるサトウキビの副産物であるバガスを活用した「かりゆしウェア」のアパレルビジネスだ。
バガスからアップサイクルした繊維でジーンズやかりゆしウェアを製造・販売するRinnovationと共創し、2021年にかりゆしウェアのレンタルサービスを展開するBAGASSE UPCYCLEを設立。okicomが50%出資している。
アパレル業界は大量生産・大量消費が基本となっており、環境負荷が極めて大きいビジネスとされる。バガスから製造したかりゆしウェアは最終的に土に戻せるため、循環型のモデルで二酸化炭素の排出を抑制しようと考えた。
その過程ではトレーサビリティが重要となる。ボタンとボタンの間にICタグを縫い込み、製造されてからどのくらい時間が経過したか、借りられた回数などを遠隔管理する仕組みを導入し、どれだけの二酸化炭素排出を抑制できたかを算出している。一連のビジネスモデルで特許も取得しているという。
その他、沖縄DXプロジェクトでは耐久性や防錆性を増したコンクリート「HPC(ハイブリッド・プレストレスト・コンクリート)」を製造するHPC沖縄と資本業務提携を結び、デジタル技術で事業展開を支援する取り組みも実施している。
このように非常に多角的なプロジェクトを進めているokicomだが、どの取り組みも短期間で大きな利益を生むことは難しいのが現実だ。ただ、okicomにとって事業的なメリットが薄いかというと、そうでもない。小渡氏は「人材の採用で圧倒的に有利です」と話し、次のように続ける。
「沖縄だけでも多くのIT企業がある中で、ここまで分かりやすく地域貢献に踏み込んでいる企業は、そう多くはありません。当社は業界の中で特別に給与が高いわけではありませんが『沖縄を良くしたい』という思いを持った人が採用に多く応募してくれていて、その内の9割が『紅型やかりゆしウェアの取り組みに関心を持ちました』と言ってくれています」
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