日産自動車は15日、神奈川県の追浜工場(横須賀市)と子会社の日産車体の湘南工場(平塚市)での車両生産の終了を決定した。追浜を巡っては台湾の鴻海精密工業との生産協業も取り沙汰されたが、記者会見したイバン・エスピノーサ社長は「合弁や委託生産は検討していない」と否定した。創業の地から車両生産拠点をなくす決断は、楽観的な販売目標で抜本的な改革を怠った「ぬるま湯経営」への決別を象徴する。
経営再建が急がれる中、追浜工場の生産終了を2027年度末とし、長めの猶予期間をとった理由を、エスピノーサ氏は従業員サポートのためだと説明。追浜の従業員には他の工場や事業部門への異動などの選択肢を提案、できるだけ雇用維持に努めるとした。湘南工場の今後については「日産車体が決めることだ」とする一方、グループとして責任を持つとも述べた。
国内2工場の生産終了で従業員や部品メーカー、地域経済への影響は避けられない。電気自動車(EV)の生産拠点の確保を検討している鴻海との協業は、そうした事態を避ける助け舟との見方もあった。
だが、EVは成長が鈍化している。仮に協業しても工場維持には日産側の車両生産と投資は欠かせず、過剰生産能力の解消の先送りにとどまる恐れがあった。
内田誠前社長の経営体制では、生産設備の統廃合などを実施したものの、販売規模の拡大目標を掲げることで、国内の余剰生産能力や高コスト体質には改革のメスが及ばず、甘い経営見通しから危機を招いた。
エスピノーサ氏の今回の決定は、国内の関係者の大きな痛みを伴うが、内田体制と同じ轍は踏まず、改革を先送りしない経営陣の不退転の決意を示した形だ。
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