年間1000万円の学校に通うのは誰か? 日本に迫る「国際教育バブル」教育ビジネス(1/2 ページ)

» 2025年07月21日 08時00分 公開
[宮田純也ITmedia]

この記事は『教育ビジネス』(宮田純也/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。


 年間約1000万円の学費が必要な学校が日本に存在します。

 これは、全寮制のハロウインターナショナルスクール安比ジャパンの学費と寮費などを合算した概算金額です。この学校は、2022年8月に、かつての英国首相チャーチルも学んだ英国のパブリック・スクールと呼ばれるエリート養成機関に部類される名門校ハロウスクールの流れを汲(く)んで岩手県八幡平市安比高原に設立されました。

(出典:ゲッティイメージズ)

 日本にもついに超格差社会が到来したかと思った方がいるかもしれません。ですが実は、この学校は日本人だけを対象としている学校ではありません。

 中国の富裕層をはじめとしたアジア圏の富裕層の子どもがメインターゲットなのです。アジア圏の富裕層は、地政学的な要因で安全な日本で、英国式の優れた教育が受けられるインターナショナルスクールに子どもを通わせることに魅力を感じているとされます。このトレンドが長期的なものだと見込まれているため、現在「インターナショナルスクール」という新たな学校が日本に相次いで誕生しています。

 児童や生徒の全員が日本人ということではないため、日本人の入学者数は学校数の増加によって増えていると見られますが、日本人が大挙してインターナショナルスクールに通い出しているわけではありません。また、経営が一定の基準にもとづいて日本人の資本で運営されているわけではないため、その評判や運営実態も多様です。

 インターナショナルスクールが、全寮制小学校として開校した神石インターナショナルスクール(広島県神石郡神石高原町)のような例外を除き、学校教育法第1条に規定する「学校」として認められる場合は数少なく、多くは学校教育法第134条に規定する「各種学校」として認められているか、無認可の塾のような形態で運営されています。

 基本的には、英語など日本語以外の言語を用いて、独自のカリキュラムで学ぶ学校です。なお、文部科学大臣の指定を受けることができたインターナショナルスクールを卒業した生徒には日本の大学への入学資格が与えられます。

(出典:ゲッティイメージズ)

 ちなみに、日本には公立のインターナショナルスクールがひとつだけ存在します。それが、広島県立広島叡智学園です。国際バカロレア認定校で全寮制、中高の教育課程が整備されています。インターナショナルスクールは学費が高額になる場合が多いですが、広島叡智学園の中学校は公立中学校という扱いで、義務教育のため授業料が無料になっています。

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