AIレコメンド発注の強みは、人間では処理不可能な膨大なデータを瞬時に分析する能力だ。システムが分析するデータは過去1年間の販売実績はもちろん、店舗周辺の通行量、気象データ、カレンダー情報など多岐にわたる。
さらに、個店ごとの特性も考慮する。「駅前の店舗と住宅街の店舗では、同じ天候でも売れるものが違います。AIは過去1年分のデータから、『この店舗で、この天候で、この時間帯なら、何がどれだけ売れたか』を瞬時に割り出します。人間では、何時間かけてもなかなか分析しきれない量のデータです」(村井氏)
AIレコメンド発注には、ユニークな機能がある。自店舗と立地環境が似ており、かつ利益額が高い店舗の販売実績を参照し、自店にない売れ筋商品をレコメンドする「お手本店」機能だ。この機能を実装した背景には、コンビニ業界における長年の課題があった。「コンビニでは、基本的には自店のことしか分かりません。隣の店で何が売れているか、どんな新商品を置いているか、知る術がありませんでした」(村井氏)
これまでは、本部のスーパーバイザーが店舗を巡回。「近隣の店舗では、この商品が売れてますよ」といった情報を地道に展開していた。しかし、スーパーバイザーは数店舗を担当しているため、発注の度に立ち会うわけにもいかなかった。
もっと、気軽に他店舗の状況が知れたら。そこで生まれたのが「お手本店」機能だ。「AIが、瞬時に自店と似たような数店舗をピックアップします。そこの売れ筋商品で自店にまだ置いていないものがあれば、レコメンドしてくれる仕組みです」(村井氏)
「お手本店」機能を含む、AIレコメンド発注の予測提案を活用するかどうかは、各店舗に任されている。活用する場合も、全ての予測を受け入れる必要はない。店舗側は「意思入れ」と呼ばれる方法で、AIの推奨値を修正することも可能だ。「例えば、新商品など過去データがない商品は、類似商品のデータを基に予測しますが、店舗の判断で調整できるようにしています」(村井氏)。実際は多くの店舗が積極的に予測データを活用しており、店舗スタッフからの信頼度も高いという。
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