コクヨが「大人のやる気ペン」の開発に着手したのは、「しゅくだいやる気ペン」を発売してから3年ほど経過した頃。SNSやWeb上のレビューで、「大人がしゅくだいやる気ペンを使っている」といったコメントを目にするようになったためだ。
「以前から、『仕事やる気ペンがほしい』といったネタ的な投稿はよく見かけていました。しかし、それとは異なる『資格勉強に使っている』などのコメントが増え、『本当に使っているのかな』と思って、『しゅくだいやる気ペン』の利用者に聞いてみたんです」
すると、利用者のうち数%が大人であることが判明。インタビューしてみると、約7割が資格勉強や自己学習に使用していて、難易度の高い資格試験に挑戦する人が多かった。そんななか、「どうしても最初の10分ができない」「以前、資格勉強に挫折した」「誰も褒めてくれないし、怒ってもくれない。孤独感がつきまとう」など切実な悩みを抱えていたという。
「何とかして学習を継続したいけれど、自身のがんばりだけでは続けられない。そうした悩みを持つ方が『しゅくだいやる気ペン』に興味を持ち、購入されていました。使ってみた結果、製品のおかげで合格できたという方も。子ども向けの製品を購入した極めてレアな方々ですが、製品の魅力が強烈に刺さっていると感じました」
「商品開発において最も大事なのは、深く刺さる人がいるかどうか」だと中井氏は言う。事業として成り立たせるには、ターゲットが広いかどうかの指標もあるが、人を幸せにすることにフォーカスした時には、「とにかく深く刺さっている」ことが価値になる。インタビューを通じて、ターゲット層の解像度がクリアになったという。
市場ニーズについても調べると、ニッチではあるが意外と広いことも分かった。コクヨが実施した1万人規模のアンケート調査では、大人の26%が資格勉強に取り組むものの、そのうち71%が途中で挫折していた。そうした背景から、“資格試験の勉強に切実に取り組む層”をターゲットに「大人のやる気ペン」の開発が本格化した。
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