「上司 vs 部下」という対立構造ではなく、「より良い方法を一緒に考える」というスタンスで臨みます。角を立てずに距離感と主導権を保ちましょう。
(1)仕事とゲームは違う
手っ取り早く教えると、単に「やり方」だけを伝えることになりがちです。しかし、仕事の本質を理解するという意味で考えると、「どうしてその手法を使うのか、なぜその方法が有効なのか」を理解させることが重要でしょう。ゲームでは直感でそれが分かるかもしれませんが、仕事ではそうはいかないことも理解してもらいましょう。
「要点を絞ることはできるけど『手っ取り早く』だと伝わらないことも出てくるかもね」「手っ取り早くが目的だと、本来の目的そのものを見失うかもしれないよ」等
自分で考えさせる……とはいえ、手も足も出なければ元も子もありません。ここでは、適度なヒントを与えつつ、自分で考える「きっかけ」をつくりましょう。
「まずはこの部分を試してみて、その結果がどうなるか考えてみてごらん。もしそこで分からなかったら、次にどう進めるか一緒に見ていこう」等
(2)成熟度が高い部下には……
部下の着眼を取り入れたほうがチームにとってプラスかもしれない、と思えたら、次のアプローチも一考です。
若者のリクエストに応じて、「簡潔に、要点を教える」ことで早いスタートを切らせます。その後、段階的に深掘りしていくことにシフトチェンジします。学びのステップをつくり、進行に応じて新しい知識を追加していきます。
「今、やるべきことの要点はこれだよ。でも、今後進める中で出てくる問題を解決するには、この部分もしっかり理解しておく必要がある」
→ 最初に効率的な教え方をしつつ、次第に学びを深める機会をつくり、継続的な能力の発現につなげます。
同時に「長期的な学び」の価値を伝えることも必要です。短期的に結果を出すことと、長期的なスキルや知識の蓄積の双方が機能することを分かってもらいましょう。
「短期間で成果を出すことも大事だが、長くこの仕事を続けていくためには、もっと深い理解が必要だ。ここは、焦らず少しずつでもいいから、しっかり学んでいこう」
→若者に長期的な視点を持たせ、自分の成長を見つめ直す機会を与えます。
(3)ゲームの種類について
再びゲームの話です。ゲームには、A「解き明かすこと」と、B「やり込むこと」の2パターンが存在します。「若者がすぐ答えを知りたがる」のであれば、大半のゲームは、すぐ飽きられ捨てられてしまうはずです。でも実際、そうはなっていません。
それは「B:やり込み型ゲーム」に魅力を感じるからです。仕事も同様に「A:解き明かし型」から「B:やり込み型」へと導いて差し上げるのが理想です。仕事の面白みを実感してもらえれば尚良いです。
さらには、やり込み型の仕事を、「挑戦→達成→報酬」にもっていくとよいでしょう。アプローチを変えることで、楽しさや充実感が生まれます。さまざまな仕掛けを行い心が離れた状態を長引かせないことです。
その他、指示の受け方やコミュニケーションの取り方を伝授しましょう。ここでは、部下をモンスターにさせないことが重要です。「これからも聞いてくれて構わないし、率直でいてくれていいけど、言い方だけは気をつけよう」と加えます。
H・Rサポート、株式会社クレドコラ(credocara)代表
青山学院大学文学部フランス文学科卒業
日商岩井株式会社(現 双日株式会社)入社
1998年社会保険労務士資格取得、2000年独立開業〜現在 H・Rサポート(港区西新橋にて社会保険労務士事務所経営)
2004年研修講師として活動開始し、管理職選抜・昇格審査事業の一環として、部下育成の相談( 面談)を受託。年間約100日(20年間)、約20,000人対応。現在、研修講師および人材アセスメントのチーフコンサルタントとして活動中。
著書に『Z世代に嫌われる上司 嫌われない上司』(ぱる出版)がある。
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