――年間でどれくらい現場に足を運んだのですか。
コロナ禍が終わり、興行が復活した一昨年や昨年が最多でした。正確に数えたことはありませんが、スタッフと私も手分けし、毎週のように、年間にすると100回以上は現場に行っています。実はオンコロライブを始める10年前までは、私自身アイドルやその界隈に全く興味はありませんでした。ですが、啓発の目的を果たすために必要だと考え、徹底して現場に通いました。
――興味がなかったアイドルに、なぜ関心を持つようになったのですか。
それは、9月の第10回にも出演予定の女性アイドルグループ「LinQ」との出会いがきっかけです。NPO勤務時代に、がんの啓発イベントをしていた際、ある方の推薦で「福岡でデビューした子たちと一緒にやってみませんか」と声をかけられました。当時の私は、正直「アイドルか」という戸惑いもあったのですが、想定以上に彼女たちが真剣に取り組んでくれて、その姿に感じるものがありました。
小児がんやAYA世代のがんの課題は、「重要なのに社会に十分伝わっていない」ということです。一方でアイドルも、良い楽曲やパフォーマンスがあってもなかなか伝わらないという課題を持っています。立場は違っても「伝わらない中でも懸命に続ける」という共通点があると気付き、連携して成長していく可能性を感じました。音楽の嗜好やジャンルの壁もあって、すぐに成立するわけではありませんが、スタートラインは同じだと思っています。
――スポンサー収入のビジネスモデルに切り替えてから、どんな提案や売り込みを企業に対してしたのでしょうか。
背景として、2006年にがん対策基本法が成立し、その後のがん対策基本計画に小児がんやAYA世代、臨床研究の推進が重点課題として明記されました。これに伴い、ヘルスケアや製薬企業の姿勢も変化し、こうした取り組みに賛同・支援することの正当性が、社内で通りやすくなりました。協賛の稟議書も通過しやすくなったと感じています。
さらに、無償開催や豊島区との共催、出演者の顔ぶれの強化によって、社会性・公共性・到達範囲の3点をセットで企業に提示できるようになり、スポンサー提案は格段にやりやすくなりました。
――2021年以降の豊島区との行政連携も効いたのですね。
はい。豊島区はサブカルチャーや多様性に理解があり、日の当たらない領域に光を当てる姿勢を強く持っていました。私たちが小児がんやAYA世代、臨床試験をテーマに据えたのも、誰もが取り組んでいる領域ではなく、まだ光が十分当たっていない領域に向き合うべきだという合意が出発点にあったからです。行政との共催は信頼性の裏付けとなり、企業への説明材料としても大きなポイントになりました。
――実際に協賛してくれた企業には、どのような顔ぶれがありますか。
初期は私と、主催企業の3Hメディソリューションの滝澤宏隆社長が直接動いて資金調達をしていました。転換点として、豊島区との初協業となった2021年にはアフラック生命保険が協賛してくださり、これは非常に大きかったです。がん保険を扱う会社が啓発の趣旨に賛同してくれたのは象徴的でした。
さらに、製薬の中核企業が名乗りを上げてくれたことによって、信頼性が一段と高まりました。今年でいえば、アストラゼネカ、第一三共、大鵬薬品、ビーワン・メディシンズ、ベーリンガーインゲルハイムなどが協賛に入っています。金額の大小にかかわらず、一流の製薬企業が参加してくれること自体が、このイベントへの信頼性を高めてくれたと感じています。
ただ、非常にもったいないのが、これまでメディアの取材がほぼ入っていないことです。代理店を通さず自前で広報してきたので、メディアリレーションが機能していないのが課題なので、強化していきたいです。
「がん啓発ライブ」を有償→無償モデルに転換したワケ ヘルスケア企業の挑戦
コロナ禍で製薬業界に訪れた転換点 ヘルステック企業が実現を目指す「バーチャル治験」とは?
音楽プロデューサー・亀田誠治が語る 日比谷音楽祭が人材育成の“現場”になるワケ
音楽プロデューサー・亀田誠治が語る 日比谷音楽祭が人材育成の“現場”になるワケ
「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相
ソニー平井元CEOが語る「リーダーの心得5カ条」 若くして昇進した人は要注意Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング