ビジネスは名刺交換というあいさつから始まる。それは相手の連絡先を入手することでもある。だが塩見事業部長と、Sansanの寺田親弘社長は、名刺にはそれ以上の価値があることに気付いたのだ。
「私は三井物産系の会社で働いていたエンジニアでした。最初は名刺にそれほどの価値を感じていませんでした。当時、寺田も三井物産で働いていましたが、彼が営業を頑張り、3カ月かけてキーマンにたどり着いたとき、実は別の社内の人間がすでにそのキーマンのことを知っていたという事例がありました。そう、意外と社内の人間が重要人物を知っていることもあるんですよね。寺田は、その課題を解決する必要性を感じました」(塩見事業部長)
その後、名刺管理ビジネスに関係する起業を考えた寺田氏は、塩見事業部長に相談し、議論を深めていった。会社設立の経緯をこう語る。
「ビジネスSNSのLinkedIn(リンクトイン)があるので、名刺はそのうちオワコンになるだろうと当初は思っていました。ですが、話し合いを進めると、意外に深いビジネスだと感じるようになりました。名刺に書かれているのはシンプルな情報ですが、名刺の交換自体に価値があり、誰と誰に会ったという事実は貴重なデータそのものなのです。これを、きっちりと記録せず、データ活用もできていない現状がある。宝の山だと思いました」
起業当初は、法人向けの「Sansan」の提供を2007年から開始した。その後2012年に個人向けのEightを立ち上げた形だ。
「法人向けのSansanのビジネスを進めていく中で、個人向けを中心に手掛ける競合企業が出現した場合、会社の脅威になると感じたのです。紙の名刺をなくそうという意味では一つの山ではありますが、法人から登るルートと個人から登るルート、どちらからでも登ってみようと考えました」
現在、Eightに携わる社員は170人ほど。うちエンジニアは約40人だ。「まだ、紙の名刺をなくせていませんが、新型コロナウイルスが広がったときも含めて右肩上がりで成長しています。しっかりと山を登れている感覚はあります」
着実にユーザーを増やしてきた結果、ユーザー数は400万人を突破した。「日本で名刺を普段使いする人は約2000万人という推計があります。2000万人を市場の上限としたときに、約600万〜700万人(の獲得)が一つのマイルストーンになると思います」
つまり、その数字にまで達すれば、世間でテジタルの名刺交換が広く認知され、ためらうことなくデジタル名刺を使える世界に向けて大きく加速すると考えている。一方で、一種の「壁」も感じているという。実現は少し先になるとも予想しているようだ。
「正直、もう少し早く広まると思っていました。『デジタルによる名刺交換は失礼ではないか?』という認識がまだまだ根強く、その認識を変えるところが一つの壁になっていますね」
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