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» 2021年09月24日 09時42分 公開

岡田武史監督に聞くリーダー論 私利私欲でメンバーを外したことは一度もない経営者・岡田武史【後編】(1/4 ページ)

日本代表を2回もサッカーワールドカップに導いた希代の名監督・岡田武史。日本代表監督と会社の経営者という2つの立場を経た今気付いた、チーム作りと会社作りの共通点、マネジメントの極意とは――。日本代表監督時代を振り返りながら、“指導者・リーダーとしての岡田”に迫る。

[霜田明寛,ITmedia]

 日本代表を2回もサッカーワールドカップに導いた希代の名監督・岡田武史。現在は会社を率いる経営者であり、日本を代表するリーダーと言っていい。

 だが、初めて日本代表監督を任された1997年当時は、日本代表はおろか、クラブチームの監督経験もない41歳のコーチだった。スター選手も多かった日本チームを、どうまとめあげていったのか――。

 「会社もサッカーも、結局は人のマネジメントなんです」と語る岡田。

 日本代表監督と会社の経営者という2つの立場を経た今気付いた、チーム作りと会社作りの共通点、マネジメントの極意とは――。“経営者としての岡田”を見せてもらった前回(関連記事:岡田武史監督が選んだ経営者という生き方 FC今治を通じて“チーム日本”を引っ張る)に引き続き、今回は日本代表監督時代を振り返りながら、“指導者・リーダーとしての岡田”に迫る。

岡田武史(おかだ・たけし)株式会社今治.夢スポーツ代表取締役会長。早稲田大学卒業後、古河電気工業サッカー部(現ジェフユナイテッド市原・千葉)に入団し、日本代表選手にも選ばれる。 現役引退後は指導者としての道を選び、ジェフ市原のコーチを経て、1995年にサッカー日本代表のコーチに就任。1997年に日本代表監督に抜擢され、1998年のフランス大会(日本初出場)2010年の南アフリカ大会(日本初のベスト16入り)と、2度のW杯を戦った。2012年には中国のクラブチームの監督を務めるなどした後、2014年に株式会社今治.夢スポーツ代表取締役に就任。2016年より現職(撮影:山崎裕一)

W杯ベスト16に導いた“ブラックパワー”

――ワールドカップで日本代表がベスト16に行ったのは3回だけで、うち1回が2010年の岡田さんのときです。その3回は何が違ったのでしょうか。

 正直、2002年のトルシエ監督のときは日韓開催でファーストポットといって一番強いチームが入っていなかったから、ベスト16に行くのはそう難しくなかったんです。

 僕のときと、西野さんのときは何が違ったか。それは、どっちも「ダメだ」といわれていたこと。たたかれてたたかれて、選手たちが、「コノヤロー!」という感じで主体的に動き出したんです。日本人って、本当に主体的に動き出すまでに、そういったタガを外すキッカケが必要なんです。これを僕は“ブラックパワー”と呼んでいます。ブラックパワーは強烈なエネルギーはあるけど、長続きしないという側面もあります。

――やはり主体的に動くことはサッカーでも必要なことなんですね。

 日本人は言われたことはきちんとやるけど、自分で判断ができない、とよくいわれますよね。これから日本代表が世界でベスト16以上に入っていくためには、主体的にプレーする自立した選手が必要だと思っています。

――今はまだ選手が自立している状況とはいえないのでしょうか。

 おととし、森保ジャパンがベネズエラ戦で、前半で4点ぶちこまれたことがありました。そのときの日本代表の選手たちは皆「どうしたらいいんですか」という感じで、目が泳いでいるんです。選手同士が言い合いをするわけでもありませんでした。でも、同じ年の11月のU-17のワールドカップで、強豪フランスとブラジルが対戦したことがありました。大方の予想はブラジルがこてんぱんにやられる、というものだったんです。

 その通りフランスが圧倒したのですが、ブラジルが何とか前半を0対2と、2失点でしのぎました。そして、ハーフタイムにカメラが選手を抜いたら、なんと17歳以下のブラジルチームの彼らがサブもレギュラーも集まって、激しく言い合いをしているんです。しかも、そこに監督やコーチはいない。

 後半、奇跡の逆転をしました。彼らは毎週、クビになるのかどうかという状況にいるから、コーチの言うことだけを聞いていても生き残れないんです。日本でそういうことができるかといったら……現状では無理ですよね。ユースに選んでその翌週にクビにしてしまったら、親が飛んできますよ(笑)。

――国によって気質や風土が違い、それが試合での様子にも表れてくるんですね。

 日本人の「負けたらお世話になった皆さんにご迷惑が掛かる」といった態度も、それはそれで素晴らしいです。でも、スポーツというのは自分のために、主体的に自分でやるものです。そもそも、サッカー選手でなくても、この国では、自分の人生は自分で選べますからね。

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