インタビュー
» 2019年07月31日 05時00分 公開

勉強しない日本人に喝!:大前研一が「年金2000万円問題」を斬る! 終身雇用「崩壊」時代はこう乗り切れ (1/6)

大前研一氏は、金融庁が出した「年金だけでは老後資金が2000万円不足する」という報告書を巡る議論について「ウソと誤解ばかりだ」と、喝破する。

[田中圭太郎,ITmedia]

 「年金だけでは老後資金が2000万円不足する」と試算した金融庁の市場ワーキンググループの報告書を巡り、国内では混乱が広がった。しかし、「この問題を巡る議論はウソと誤解ばかりだ」と、ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学学長の大前研一氏は一蹴する。

 大前氏は、日本人が生涯にわたって豊かに生き続けるために必要なのは、常に学び直す「リカレント教育」だと訴える。『稼ぐ力をつける「リカレント教育」』(プレジデント社)を6月に上梓した大前氏に、「リカレント教育」の必要性や、日本の教育の問題点などを聞いた。

photo 大前研一(おおまえ けんいち) (株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長。早稲田大学卒業後、東京工業大学で修士号を、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得。日立製作所、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て現職。英国エコノミスト誌は、現代世界の思想的リーダーとしてアメリカにはピーター・ドラッカー(故人)やトム・ピーターズが、アジアには大前研一がいるが、ヨーロッパ大陸にはそれに匹敵するグールー(思想的指導者)がいない、と書いた。経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。新著に『稼ぐ力をつける「リカレント教育」』(プレジデント社)

「人生100年時代」と「老後2000万円不足」の誤解

――人生100年時代を迎え、年金だけでは老後に2000万円不足するという金融庁の市場ワーキンググループの報告書に対して批判が巻き起こり、麻生太郎金融相が報告書の受け取りを拒否するなど、政府も国民も混乱しました。この問題をどのように見ていますか。

 まず「人生100年時代」の言葉自体がまったくのウソです。この言葉は安倍晋三政権の「人生100年時代構想会議」のアドバイザーをしている、ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏が、著書『LIFE SHIFT』で提唱しました。しかし、彼女は人口動態から2007年に生まれた日本人の半数が107歳まで生きると予測しているだけです。みなさんに当てはまる話ではありません。

 年金だけでは老後に2000万円不足する試算も、国民全体のことだと誤解されています。これはあくまで現在60歳から65歳の人が、厚生年金を受給して、95歳まで生きると仮定した場合の試算です。しかし実際には、日本人で95歳まで生きる人は4人に1人しかいません。さらに約半分の人は、65歳までにすでに2000万円以上の金を貯(た)めているので、老後資金が不足すると考えられるのは8人に1人。約12.5%ということになります。

 あたかも国民全体が、老後に2000万円足りなくなるかのような議論をしたことで、安倍首相は墓穴を掘りました。そもそも国民全体に当てはめたことが間違いなのです。

 いまの日本で、実際に老後資金が不足すると考えられるのは、国民年金を受給する人です。国民年金だけだと、生活費が月々16万円ほど不足します。長生きすることはおめでたいことなので、足りない人については国が全て面倒を見ます、という対応ができればそれで終わる話です。議論を解きほどく力を持った政治家がいなかったために、問題が大きくなったのだと思います。

photo 「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合、20年で約1300万円、30年で約2000万円の取り崩しが必要になる」との一文がクローズアップされ、炎上した(金融庁のWebサイトより。金融審議会「市場ワーキング・グループ」が書いた報告書「高齢社会における資産形成・管理」)
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