――日本人は、学生も社会人ももっと勉強しなければ、危機的な状況にあるということでしょうか。
おっしゃる通りです。25歳以上の学士課程への入学者の割合を国際比較した、文部科学省の15年の資料によると、日本はOECD(経済協力開発機構)の平均16.6%を大きく下回る2.5%。OECDの中ではベルギーと並んで最低レベルです。日本人は、本人も、親も、先生も、学校に行っただけで勉強したと錯覚してしまうのです。
いまは比較的就職もしやすいので、学校で学んで、会社でOJTで学べば、人生そこそこやっていけると考えるのでしょう。だから改めて勉強する人は極端に少ないのです。
この考え方は高度経済成長期では正しかった。欧米が答えを持っていて、日本は欧米から技術を学んで実行し、追い付け追い越せとがむしゃらにやれば、それはそれで成り立っていたからです。
しかし、いまは欧米も答えを持っていません。自分で答えを探さなければならないのです。日本では方向を間違っている会社がとても多い。私は勉強しない日本人の姿勢に喝(かつ)を入れたいと思います。
トヨタ自動車の社長が「終身雇用は難しい」と発言して波紋を呼んでいるようですが、気が付くのが遅すぎます。この発言がニュースになることが、私には不思議でしようがないです。トヨタも銀行も将来どうなるか分からない時代ですから、むしろ「面倒を見切れない」と早めに言われることは、働いている人にとってはいいことではないでしょうか。
日本にも新入社員に関連会社の社長を任せるサイバーエージェントや、38歳で退職する人に「ステップアップ支援金」を支給するリクルートのような会社があります。これらの会社では、自分で独立して生きていける方法を最初の10年くらいで勉強しなければやっていけません。こういう企業が増えて、会社を移るなり、起業するなり、どんどん変わっていけばいい。
豊かに生き続けるためにも、世界と闘うためにも、日本人は常に学び直して、新しいことにもっと挑戦していくべきだと思いますよ。
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/
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