――ということは、老後資金の不足という問題の解決策は、報告書が勧める資産運用ではなく、別のところにあるということでしょうか。
日本人は老後資金を問題にすること自体がおかしいほど、世界でも高いレベルで老後に対する備えができています。典型的な現象は、この20年間経済が低迷していると言われながら、個人金融資産が倍増して1800兆円にのぼっていることです。
金融資産を持っている人たちは、老後に何の心配もありません。足りない人には、持っている人から取り上げる方法もあるでしょうし、金利を上げる方法もあります。1800兆円に対して、金利を4%つければお釣りがきます。足りないといわれている2000万円が、金利だけで出てくるわけです。
私は、金利が高い方が、日本の景気はよくなると考えています。消費税を1%上げた場合、税収が2.5兆円増えるだけで消費自体は冷え込むでしょう。ところが、1800兆円に1%金利がついただけで、増えた18兆円が消費に回れば、盆と正月が一緒に来るようなものです(笑)。
安倍首相と日本銀行の黒田東彦総裁による「アベクロ政策」は、借金が多い企業を救うことが目的でしょう。しかし、結果的に日本の豊かな個人金融資産を、価値のないものにしています。何をやっているのかと思いますね。
――金融資産を持っている高齢者が、なかなか金を使わないという別の問題もありますよね。
日本人の貯金額が最大になるのは死ぬ時で、だいたい3000万円くらいのキャッシュを持っています。この金を使えば景気はよくなりますが、われわれの世代は金を貯めろといわれてきたので、なかなか使うことができません。銀行に金を集めて、産業界に低い金利で貸す政策をとっていた時代の犠牲者とも言えます。また、いざというときのために残しておきたいという不安もあるでしょう。人生を楽しむことに金を使わないまま、死んでいくのです。
イタリア人は、死ぬ瞬間に持っているお金がなくなるように使います。死ぬ時に金が残っていたら悔やむくらい、バケーションなどに金を使って人生を楽しんでいます。そう考えると、2000万円足りないといって騒いでいるのは、世界を知らなさすぎます。日本人は因果ですね。
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