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清水建設が仕掛ける「ニューノーマル時代のオフィス」 社員のタグから位置情報を可視化単なるコスト増か? 生産性向上か?(1/2 ページ)

» 2021年08月15日 14時12分 公開
[中西享ITmedia]

 大手ゼネコンの清水建設が、ニューノーマル時代の新たなオフィスの在り方を打ち出している。デジタル技術を活用して、リモートワークとコロナ禍に対応した、パフォーマンスの向上につながる「Shimz Creative Field」(シミズ・クリエイティブ・フィールド)を公開した。

 当面は本社の設計、営業フロアを全面改修し、Shimz Creative Fieldのモデルフロアとして、オフィスの新築・改修を計画しているビル所有者の見学を受け入れる。今後について奥山昌則・プロポーザル・ソリューション推進室、FMソリューション部長は「施主にこの考え方を提案して、案件受注に結び付けたい」と話す。

改装された清水建設の設計本部フロア(以下、同社提供)

高精度の位置情報システム

 コロナ禍の長期化を受けてゼネコンやデベロッパーは新しいオフィスの在り方を検討している。ニューノーマル時代に先駆けて新しい商品としてオフィスを提案したのは、ゼネコン業界では清水建設が初めてだ。今後1年をかけて、本社のほかの部門のフロア改修も進め、地方支店社屋などについても計画を進めるとしている。

 Shimz Creative Fieldの最大の特徴は、高精度測位が可能な位置情報システムだ。社員のタグから個々の社員を認識し、各勤務地の座席配置を示したフロアのレイアウト図上に個人の所在を表示し、誰が今どこにいるかをライブ配信できる。オフィス利用者は、レイアウト図をパソコンやスマートフォン、タブレットで共有することによって、画面上で関係者の所在や各ゾーンの空き状況を確認できる。

 また氏名を入力すると所在検索も可能。このため、社員は勤務地を問わず、あたかも同じ空間にいるような感覚で同僚や上司の居場所や仕事の状況を確認できるのだ。加えてタイミングを見計らって面談のアポイントを決めたり、カジュアルなコミュニケーションを交わしたりすこともできる。

 この位置情報システムはフィンランドのハルティアン社のもので、位置情報の精度が高いことから導入を決めた。

改装前の設計本部フロア

決まった席はない

 Shimz Creative Fieldにフロア改修をした清水建設の本社17階の設計本部を見学した。入り口には本部全体のレイアウトを示した大きなモニターが置いてある。モニターには名前のついた部員の顔写真が表示してあった。本人が移動すると顔写真も移動し、フロア内の現在地がライブでモニターに表示される仕組みである。つまり、フロアにいる限りは、誰がどこにいるか一目瞭然というわけだ。しかも社員ならば、自宅などほかの場所にいてもスマホで同じ画面を見ることもできる。

 設計本部のこのフロアには、これまでは部員と同数の約290人分の一般執務机が並んでいた一方、改修後はその6割に当たる170席程度しかない。出勤をしたら、空いている席を見つけて座ることになる。その代わり、230席程度の多様な特徴を持ったオープンの席があるため、座る場所がなくなることはない。この席の比率は、社員の働き方行動調査とアクティブマッチング調査をもとに必要座席数を割り出し、算出した。

 コロナ禍で出社人数を制限しているため空席が目立ったものの、大画面に向かって黙々と作業をしている人もいれば、ソファ席に座ってリラックスした雰囲気で仕事をする社員もいる。席はできるだけ固定化しないようにしているようで、同じ設計本部でも異なる部署の社員が交わることで全体的に仕事の効率が上がるとみている。打ち合わせをするオープンミーティングエリア、プレゼンテーション用のスタジオ、少しリラックスできるソファ席、集中して作業ができるように隣との間に仕切りを設けた個室など、仕事内容に応じた特色ある場所を配置していた。

 また11階の営業部門フロアは、営業の各グループを超えてそれぞれが持っている情報を共有できるよう「情報共有のコア」スペースを設けている。奥山部長は「柔軟で多様な働き方を実現し、創造を誘発するワークプレースになる」と位置付けている。

設計本部の入り口にある社員の居場所を表示したモニター
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