「サントリー会長辞任」にざわざわ 逮捕なしでも“プロ経営者”が辞めざるを得なかった理由スピン経済の歩き方(3/7 ページ)

» 2025年09月10日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

相手は「サプリメントの素人」だった

 そのようにマッサージサロン経営者・セラピストとしては素晴らしい実績をお持ちの女性なのだが、ここで大事なポイントは「サプリメントの専門家」ではないということだ。

 英語で記載されたマッサージ店の公式Webサイトでも独自のメソッドを開発したことなどを解説しているが、サプリメントやCBDに関して専門知識を学んだような経歴はない。マッサージメニューのところに「CBDオイルを用いる場合は施術費用に20ドルが追加になる」という言及があるだけだ。誤解を恐れずに言ってしまえば、「サプリメントの素人」である。

 そんな女性に新浪氏はすすめられるまま、CBDサプリメントを日本に持ち帰ろうと決意したのである。この事実を報告された取締役会メンバーの多くは「新浪会長、正気ですか?」と腰を抜かすほど驚いたはずだ。

 言うまでもなく、サントリーHD傘下のサントリーウェルネスは1000億円の売り上げを突破した「サプリメントのプロ」である。ホールディングスの会長なのだから、CBDサプリにそれほど興味があるのなら、同社に確認すれば済む話である。

サントリーウェルネスの公式Webサイト

 サントリーウェルネスの栗原勝範社長は、2022年からサントリーHDの執行役員も務めている。社長や会長として10年以上、取締役会に名を連ねてきた新浪氏としては当然、知った間柄だ。その栗原社長に一本電話を入れて「知人の女性がこういうCBDサプリをすすめてくるんだけど日本に持ち込んでも大丈夫?」と確認をすれば、こんな事態は起きていない。

 そもそも新浪氏がCBDサプリに手を出したのは「海外出張が多くて時差ボケがひどい」ということだが、サントリーウェルネスには睡眠を改善する「睡眠セサミン」というサプリメントもある。また、自社製品でなくとも時差ボケには「ロゼレム」という医薬品も有効とされている。

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