「アルバイトの給料を現金ではなく、PayPayでもらうとしたら?」――座談会でのこの質問に、高校生たちの答えは意外なほど一致していた。
「もらった感があってうれしいので、現金の方が良いですね」
佐藤君は月2500円のお小遣いの受け取りも、友達との割り勘もPayPayを使う。それでも、バイト代は現金が良いという。田中君は「現金であれば、どこでも使える」という利便性も強調する。ポイント還元を提示されても、その意見は揺るがない。「10万円使っても、1%なら1000円にしかならない」と冷静に計算する。
一方、親世代の意識は違う。MMD研究所の調査では、親が最も意識している経済圏は「楽天経済圏」が36.8%でトップ、次いで「PayPay経済圏」「ドコモ経済圏」だ。最も活用している共通ポイントも「楽天ポイント」が34.5%で首位となっている。
座談会でも、親たちは「クーポンなど意識している」「還元率が高い方を選ぶ」と、ポイントへの執着を隠さない。
高校生のキャッシュレス利用率62.1%という数字は、確実にデジタル決済が浸透していることを示している。親子間の送金は日常化し、学校の自販機もキャッシュレス対応が進む。財布を持たない高校生も多い。
しかし、今回の座談会で明らかになったのは、高校生が「親との関係ではデジタル、友達との関係ではアナログ」という2つの世界を生きているという事実だ。便利さを享受しながらも、現金への信頼も依然として厚い。デジタルと現金の間で揺れる高校生たちの姿は、日本のキャッシュレス社会の現在地を映し出すと同時に、その未来への問いかけでもある。
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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