近年、「文化の盗用」問題がクローズアップされています。文化の盗用とは、服装、伝統、シンボル、芸術など特定の文化や民族に固有の要素を、別の文化の人々が無理解または軽視した形で取り入れることを指します。
この概念は、特に力の不均衡や歴史的背景がある場合に問題視されます。パリやミラノでコレクションを発表している著名なデザイナーが、この文化の盗用問題で批判を受け、謝罪する事象がしばしば見受けられます。安易に先住民族のシンボルを柄に使うなどした事例が多く、例えばエスニックトレンドなどと簡単に片付けていたメディアも反省しなければならないことかもしれません。
ユネスコでは、2005年に「文化の表現の多様性の保護と促進に関する条約(文化の多様性条約)」を採択し、文化の多様性の尊重や公平な文化交流に関連する原則を通じて、間接的に文化の盗用問題に取り組む枠組みを提供していますが、日本政府はまだ批准していません。
私見ではありますが、これは「商業的に利益を得られる先進国の立場を守ろうとする意図があるのでは」とうがった見方をしてしまいます。いずれにしても先進国が後進国の文化をリスペクトなしに形だけ盗用、商業利用し、その文化を守ってきたコミュニティーに利益を還元しないという事が許されない時代になりました。
以前はエスニックテーストなどとトレンド扱いしていましたが、何がトレンドなのかの疑問符も付きます。慎重に判断すべき要素のひとつと言えるでしょう。
ファッション・ジャーナリスト
1963年東京生まれ。法政大学社会学部卒業後、1990年繊研新聞社に入社し22年間勤務。日刊繊研新聞でレディス、キッズ、インポート分野を担当し、1999年にフリーペーパー「senken h(アッシュ)」を創刊。同誌編集長およびパリ支局長を歴任。2012年に大手セレクトショップに転職し、マーケティングディレクターとして活動。2013年に独立後、ファッションビジネス専門ウェブメディア「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」を立ち上げ、杉野服飾大学特任教授(2016-2024年)、encoremodeコントリビューティングエディター(2019年-)、一般社団法人東京ファッションデザイナー協議会(CFD TOKYO)代表理事・議長(2022年-)を務める。国内外のファッション業界に精通し、コンサルティング、講演活動、執筆を通じて若手クリエイター支援に取り組んでいる。
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