「大谷ホームラン×ぼんご」売上はどうなった? ファミマの“おむすび二刀流”の秘密ササる“数字”のつくり方(2/4 ページ)

» 2025年09月14日 07時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

関東でぼんごの商品が売れた

 売り上げデータを見ると、気になる数字が3つ並んでいた。1つめは、関東の店舗でよく売れたことである。これまで大きなサイズのおむすびは、全国的に均等に売れるケースが多かったが、ぼんごの店舗は都内に構えていることもあって、関東地方で人気を集めたのだ。

 「『ぼんご』はよくメディアでも取り上げられているよね。店の前にはいつもたくさんの人が並んでいるし。ファミマで、試しに買ってみようか」といった消費者心理が働いたようである。

 全国で均一に売れる大谷効果と、関東に偏りが出たぼんご効果。この2つの掛け合わせによって、前年比120%につながったようだ。企画を担当した橋本剛さんは「これまでのキャンペーンと単純に比較はできないが、『前年比120%』の数字は過去最高レベルだ」という。

「大きなおむすび 昆布とツナマヨネーズ」(258円)
「大きなおむすび マヨたま」(285円)

 ちょっと話がそれてしまうが、なぜファミマは「大谷×ぼんご」の企画を実施したのだろうか。

 おむすび、パン、飲料――この3つの商品に共通することは何か。「来店動機商品」である。試しに買ってみて「意外とイケる」となれば、次の来店につながるかもしれない。また、おむすびを買うついでに、飲料や菓子などの購入にも期待がかかる。

 ということもあって、おむすびの売り上げを伸ばすために、ファミマは「ふんわり握れる機械」や「塩の振り方を変えられる装置」を導入してきた。しかし、味は変化しているのに、お客にそのことがなかなか伝わらなかったのだ。

「手巻 シーチキンマヨネーズ」(168円)
「手巻 紅しゃけ」(195円)

 こうした課題に対して、「ブリッジ(橋渡し)になる人が必要だった」と橋本さんは振り返る。勘のスルドい読者であれば、もうお気付きだと思うが、大谷選手の起用は単なる広告塔ではなく、なかなか伝わらなかった改善を「言語化」する存在でもあったのだ。設備投資という「伝わりにくいこと」を、スター選手の存在によって、「感じられること」に変換させたわけである。

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