7.結語
未来予測は「外れる」ことを前提に読むべきだが、それでも2010年代に描かれたメガトレンドの多くは、方向性としては的中した。都市化、デジタル化、高齢化、環境・資源制約は、今や誰もが認める不可逆的な流れである。
一方で、「見えていなかったもの」として、価値観の反動、社会の二極化と中間層の劣化、地政学的衝突、安全保障の復権、そしてAIの急速な進展が加わった。これらは不確実性を増幅し、従来の社会予測を一気に塗り替える力を持つ。
企業にとって重要なのは、「当たった予測」を前提に計画を立てつつ、「外れた予測」が示す不確実性に備える二重構えの姿勢である。具体的には、
・シナリオプランニングの常態化:一つの未来像に依存せず、複数シナリオを常に検討する。
・レジリエンス投資:地政学リスクやサプライチェーン分断に備え、柔軟なオペレーション体制を構築する。
・人材とAIの共進化:AIが知的労働に浸透する中で、人間が担うべき領域を再定義し、教育・スキル再開発に注力する。
・社会的価値の再設計:二極化や分断の中で企業が果たすべき役割を問い直し、持続可能性や包摂性を戦略の軸に据える。
2010年代の未来予測を「当たった部分」と「外れた部分」に切り分けることは、単なる回顧ではない。そこから「次の未来予測」を構築するための出発点が見えてくるのである。(日沖 博道)
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