「ブラックサンダー」一本足打法の限界……突破口となる“至福”の新商品とは?地域経済の底力(3/5 ページ)

» 2025年09月30日 08時00分 公開
[伏見学ITmedia]

こだわり抜いた新商品

 社運をかけて商品開発され、2020年9月に発売された至福のバター。高級感を演出するため、実際に原材料にもこだわった。自社製造のビスケットに加えて、フランス製の発酵バターを利用。それでいて、発売当時の価格は50円程度に抑えていた。高品質の原材料を使いながらもコストはかけられない。これが最大のチャレンジだったと杉田氏は振り返る。

 興味深いのは、至福のバターが毎年リニューアルしている点である。これについて杉田氏は次のように述べている。

 「主戦場であるコンビニエンスストアだと商品の回転率を見られます。そのため、常に新しさを打ち出し、棚に並べてもらわなければいけません。発売直後は回転率も高めですが、その後は落ち着いていくため、そのタイミングで他社の新商品が出ると、『この至福のバターと交換しよう』となってしまいます。店に置き続けてもらうには、リニューアルして新規性を常に打ち出していく必要があるのです」

 売り方に加えて、顧客の好みも常に変化するため、毎年のように味を変えることが必要だという。

 打ち出し方にも工夫を凝らした。2023年までは「プレミアム」というキーワードを前面に出していたが、消費者へのアンケートや市場分析から、「リッチ」や「濃い」という表現の方が、より訴求力があると考えた。

 このような機転を効かせた取り組みが功を奏し、プレミアムシリーズの売り上げは発売から3年間で8000万本を突破し、ブラックサンダーブランドにおいて、自社出荷金額歴代1位を記録した。また、2024年に公式Xで実施したブラックサンダーシリーズ商品のファン投票企画においてランキングのトップを獲得したのである。

 9月に発売した最新の商品については、バタークッキー、全粒粉ビスケット、アーモンドビスケット、ココアクッキーという4種類のオリジナルビスケットを使用。加えて、よりリッチ感を出すべく、オランダ製やニュージーランド製など、複数のバターも試した。結果的に従来と同様のフランス製バターに落ち着いたが、こうした手間をおしまないことが、商品の品質向上にもつながっている。

新商品に使われているビスケット(筆者撮影)

 さらに、チョコレートと混ぜ合わせる焦がしバターを、従来品から10%増量。クリーミーな味わいのカシューナッツと、味のキレを引き立てるロレーヌ岩塩を隠し味に加えた。パッケージデザインはブルーを基調にゴールドの縁取りを施すことで、商品のぜいたくさをアピールしている。

2024年発売の商品(上)とのパッケージの違い(筆者撮影)

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