「B2B決済は20年前から市場は大きく、債権の電子化など長年課題感があった。古くて新しい市場だ」。丸山氏はこの市場の特殊性をこう表現する。1000兆円とも言われる巨大な市場規模にもかかわらず「どうしようもない」状況が続いてきた。
Visaの調査によると、アジア太平洋の企業は請求・回収に関わるコストとして売り上げの約4.7%を負担している。年商100億円の企業なら、年間4億7000万円が「見えないコスト」として消えている計算だ。
請求書の発行から入金確認まで、企業間取引に関わる業務は細分化され、部署をまたいで処理される。経理部門の人件費、営業部門の督促業務、財務部門のキャッシュフロー管理。これらのコストは各部署に分散し、全体像が見えづらかった。
売り上げの4.7%という数字の内訳を詳しく見ると、企業が直面する複合的なコスト構造が見えてくる。
最も大きな負担となっているのは、不良債権で、B2B売上総額の1.7%に相当する請求の回収ができていない。ファクタリング(売掛債権の早期現金化)などの外部資金調達サービスの利用も負担が大きい。58%の企業がこれらのサービスを活用しており、請求の平均34%について、請求金額の2.8%に相当する手数料を支払っている。
日常的な請求処理にかかる内部コストも、請求金額の1.4%に達する。さらに請求額の照合不一致により1.8%の手戻りが発生し、支払遅延も請求の1.5%で発生している。労働市場の変化も、この問題を深刻化させている。
一方で、カード決済の導入は企業に大きな価値をもたらす。Visaの調査によると、カード決済を導入した企業は最大で売り上げの3.7%に相当する価値を獲得できるという。
最も大きな効果は売り上げの増加だ。導入企業の50%が売上増加を報告しており、平均で2.5%の売上向上を実現している。決済期限をカード利用代金の支払日まで実質的に延長することで、購入者側はキャッシュフロー負担を軽減できるためだ。
不良債権も1.4%削減される。カード決済では買い手の発行銀行による保証があるため、未払いリスクが軽減される。外部資金調達コストは0.6%削減でき、売掛債権回転日数が平均4日短縮されることで0.3%のキャッシュフロー改善効果も生まれる。
業務効率化の効果も劇的だ。日常的な売掛金管理などの運営コストを削減できるほか、照合作業や不良債権処理などの例外処理にかかる費用も半減できる。これらのメリットを統合すると、決済手数料を差し引いても、カード決済導入企業は最大で3.6%の純メリットを獲得できるとVisaは試算している。
ただし、従来のカード決済では手数料を売り手が負担する構造が課題とされてきた。この問題を解決する新たな仕組みとして、BPSP(請求書カード払い)が注目されている。
BPSPでは、買い手が手数料を負担する構造となっており、売り手の負担を軽減しながらカード決済の利便性を享受できる。このように決済手数料の設定においても柔軟性が高まっているわけだ。
ただし、これほど明確な効果があるにもかかわらず、なぜ日本のB2B決済は長年にわたって変革されずにきたのだろうか。そこには深い構造的要因が存在していた。
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