個人向け決済のキャッシュレス化は、当初の予想を上回るペースで進んでいる。スマートフォン決済やクレジットカード決済が日常風景となり、現金を持ち歩かない消費者も珍しくなくなった。
ところが、もう一つの巨大市場が取り残されている。企業間取引、いわゆるB2B決済である。
4月に行われた三井住友銀行の中小法人向けDXサービス「Trunk」の発表会。SMBCグループCEOの中島達氏、三井住友カードの大西幸彦社長と並んで登壇した、インフキュリオンの丸山氏。Trunkに参画しユーザー視点を重視したサービス設計を進める企業が知らないうちに売り上げの4.7%を失っている。Visaがアジア太平洋地域の大企業1100社を対象に行った調査が明かしたこの事実は、日本のB2B決済が抱える深刻な課題を浮き彫りにした。請求書の照合ミス、支払遅延、ファクタリング手数料。これらの「見えないコスト」は長年、企業の収益を静かにむしばんできた。
これほど大きなコストが放置されてきたのは、コストの正確な捕捉が難しかったからに他ならない。ところがB2B決済に詳しいインフキュリオンの丸山弘毅社長は、DXの進展がこの市場に変化をもたらすと指摘する。「やり取りのコスト、調達のコスト。誰かがコストを負担していたが、それが見える化できた」。業務プロセスのデジタル化により、各部署に分散していた隠れたコストが、統合的に把握できるようになったという。
1000兆円とも言われる巨大市場で、銀行振込が92%を占める現実。丸山氏が「古くて新しい市場」と呼ぶこの分野で、変革の兆しが見え始めている。
20年前から課題感があったにもかかわらず、なぜ変革は今まで実現しなかったのか。そして、なぜ「今」が転換点なのか。B2B決済の謎を解く鍵は、意外なところにあった。
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