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「売上の4.7%が消えている」――企業の“見えないコスト”に変化、動き出すキャッシュレス1000兆円市場(4/4 ページ)

» 2025年10月07日 08時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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市場が示す変化の兆し――96%が望む未来

 転換点を迎えたB2B決済市場の変化は、企業の意識変化として明確に現れている。

 最も注目すべきは、既にカード決済を導入している企業の96%が、B2Bカード売り上げの割合をさらに拡大する意向があると回答していることだ。一度導入した企業が、その効果を実感していることの証左である。

 一方、カード決済を導入していない企業の35%が、非導入による売上機会損失を報告しており、その損失額はB2B売上総額の平均1.3%に達している。「取引先がカード決済を求めているのに対応できない」という機会損失が、現実のものとなっている。

 市場全体の成長ペースも加速している。三井住友銀行と三井住友カードが手がける中堅企業向けのDXプラットフォーム「Trunk」も、こうした流れを象徴する存在だ。決済機能だけでなく、経費管理やガバナンス強化といった機能を統合することで、企業の業務プロセス全体をデジタル化する。丸山氏は外部のアドバイザーとしてTrunkにも関わっており、「決済の前後のプロセスにどれだけ付加価値をつけられるか」という発想を体現したサービスだと評価する。

 このTrunkは「2〜3カ月で1万口座」という好発進を切っており、「毎年倍増くらいのペース」(丸山氏)で拡大している。この急成長は、企業の関心の高さを物語る数字だ。ただし、丸山氏は「本当にアクセルを踏むのはこれから」と見通しており、現在はまだ本格的な普及の入り口に過ぎないとの認識を示している。

 「決済だけをみるのではなく、デジタルでどうつなげるか」という視点で、業務プロセス全体を見直すことが求められている。では、こうした変革は日本のB2B決済市場をどのような未来へと導くのだろうか。

未来への道筋――2030年のB2B決済の姿

 市場規模の変化予測は、変革の大きさを物語る。現在、1000兆円とも言われるB2B決済市場のうち、法人カードは約10兆円の規模にとどまる。しかし、丸山氏は「少なくとも10%は現実的に捉えられる」と予測しており、これが実現すれば法人カード市場は100兆円規模に拡大する。現在の10倍という劇的な成長だ。

 2026年の約束手形廃止を契機に、多くの企業が決済手段の見直しを迫られる。この制度変更により、手形に依存してきた企業も代替手段としてカード決済を検討せざるを得なくなる。BPSPのような、買い手が手数料を負担する仕組みが普及すれば、サプライヤーの抵抗感も軽減され、導入がさらに加速するだろう。

 取引関係がより対等になっていく流れが続けば、サプライヤーの発言力が向上し、効率的な決済手段への移行が進む。「単なるフィンテック企業だと、調達するごとに銀行と組むことになるが、銀行と組めば、中から作れる」と丸山氏が指摘するように、従来の金融機関とフィンテック企業の境界が融合し、より統合されたサービスが提供されるようになる。

 2030年のB2B決済市場は、現在とは全く異なる姿になっているだろう。紙の請求書に代わってデジタル化された請求・決済システムが主流となり、リアルタイムでの取引処理が当たり前になる。企業の経理部門は定型的な処理業務から解放され、より戦略的な業務に集中できるようになる。

 Trunkのような統合プラットフォームが企業のバックオフィス業務を一元管理し、決済だけでなく経費管理、ガバナンス、資金繰り支援までをシームレスに提供する時代が到来する。丸山氏が表現した「古くて新しい市場」は、まさに新しい段階へと移行しつつある。20年間停滞していたB2B決済の変革が、今まさに本格化しようとしている。

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