このAIロールプレイングシステムの最大の特徴は、「いつでもどこでも練習が可能」という点だ。私用のスマートフォンやタブレットにもアプリをダウンロードして利用できる。
生成AIをベースにしているため、会話は自然だ。「意外とAIはすごいな」「本当に顧客の社長と話してるような感じ」と、山口氏も初めて試したときの印象を語る。同じシナリオでも「無数の会話パターン」があるため、繰り返し練習しても飽きない。
アバターは複数用意されている。温厚で為替ヘッジ商品に興味がある社長、無口で他行ですでに商品を利用している部長、厳しく商品に消極的な部長――。自分の営業レベルや顧客の性格に合わせて選べる。
評価の仕組みも工夫されている。商工中金側がチェックポイントを設定し、AIがその達成度を判定する。為替リスクの説明ができているか、顧客のニーズを的確にヒアリングできているか。スコアも表示されるため、自分の弱点が客観的に把握できる。
このシステムは「自己啓発の一環」という位置付けで、業務時間外の利用も可能だ。会議室や営業車の中など、場所を選ばず練習できる。東京支店(取材当時)の西山大介氏は週1回程度、1回15〜20分ほど自宅で使っている。「商談前日に各商品の復習として、どういう内容の話をするかを復習するために使っている」という。
初回のシナリオは「為替予約」。6カ月後に米ドルを使う予定がある企業に、為替変動リスクを避けるため今のうちにレートを固定する商品を提案する内容だ。
7月末のリリースから約2カ月。対象は東京、大阪など大都市圏の7拠点、対象者は約390人だ。「今後の全店展開に向けた試行的な意味合い」(山口氏)も込めている。
山口氏によれば、すでに230人が使っているという。残りは、「心理的ハードル」や「ログイン手続き」が障壁になっているとみる。
リリースから日が浅く、「お客さまとの商談で成約した」といった定量的な効果はこれからだ。それでも、利用者からは前向きな声が集まっている。
最も評価されているのが、チェックポイント方式のフィードバックだ。「為替予約という商品なら普通に売れると思っていたが、実際これをやってみてフィードバックを受けると、このチェックポイントは自分は言えてなかったな」という気付きが得られたと受講した西山氏は話す。
一方で課題もある。音声認識の精度だ。西山氏は「音声がうまく認識されずにスコアが低く出るとモチベーションが下がってしまう」と指摘する。シナリオのバリエーション不足も課題だ。現在は「為替予約」と「外国為替のニーズを引き出す」の2つ。「事業承継なども、あると有用だ」という具体的な要望もある。
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