AI研修の導入は、商工中金の変革を象徴する取り組みともいえる。2025年6月の民営化は、過去の組織文化からの決別も意味している。
2016年に発覚した不正融資事案を経て、商工中金は大きな転換を図った。「ノルマが撤廃されたことがかなり大きい」と山口氏は語る。本部からの計画値押し付けをやめ、各支店が自ら収益目標を考える体制に変わった。
この変化は、顧客への向き合い方も変えた。「目先の利益だけじゃなくて、その会社が今後どうなっていきたいかに寄り添い、中長期でサポート支援ができる」。ノルマに追われて無理な商品を押し付けるのではなく、企業の成長を長期的に支える営業スタイルへの転換だ。
AI研修は、この新しい営業スタイルを支える基盤となる。繰り返し練習することで、営業担当者は「提案の幅を広げるプロ営業」へと成長できる。ノルマがない代わりに、一人一人が顧客のニーズに応じた最適な提案をする力が求められる。
政府系金融機関の保守性を脱ぎ捨て、テクノロジーを活用して組織を変えていく。「あの商工中金がAI研修」という驚きは、まさにこの変革の象徴だともいえるだろう。その姿勢は、同じように変革を迫られる伝統的金融機関にとって、一つのモデルケースとなるかもしれない。
1936年の設立以来、危機の時代に中小企業を支えてきた商工中金。その使命は変わらない。しかし、その実現の手段は、大きく変わろうとしている。
【お詫びと訂正:2025年10月8日午前10時00分 タイトルと記事の一部を修正いたしました。訂正してお詫び申し上げます。】
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