土肥: 新潟精機は製造業や建設業向けの製品を扱ってきましたが、「0基点定規」で初めて子ども向けの文具を発売したわけですね。「定規の次は分度器がいいかな」といった流れで開発したのでしょうか?
村岡: 測定メーカーとして、「子どもたちには『測定』でつまずいてほしくない」という思いがあるんですよね。2021年に「0基点定規」を発売したところ、「分度器をうまく使えない」という子どもが多いことが分かってきました。
一般的な分度器は、左に「0」があって、右に向かって数字と目盛が並んでいる。一方、右にも「0」があって、左に向かって数字と目盛が並んでいる。子どもたちにとっては「数字の情報が多すぎるのではないか」「読み違えてしまうのではないか」と感じたんですよね。
実際、話を聞いてみると「混乱している」「苦労している」という声が多かった。ある保護者は、見やすくするためにドライバーなどで、内側の数字と目盛を削っていたんですよね。また、ある保護者は「0」のところに色を付けて、分かりやすくしていました。
分度器を使うのが苦手な子どもに、どうすれば使ってもらえるのか。どうすれば間違えずに読み取れるのか。保護者の苦労している姿を見て、「なんとかできないか」と考えました。
土肥: で、両面タイプにしたのでしょうか?
村岡: いえ、最初は違ったんですよね。左からも右からも「0」がある。「この数字は必要だ」という固定観念があったので、それぞれに色を付けてはどうかと考えました。例えば、左側の数字をピンク、右側の数字を青にする、といった具合に。こうすれば見やすいかなと思って、試しにつくってみたものの、しっくりこなかったんですよね。
色を付けても、たくさんの数字と目盛は並んでいる。「子どもたちにとっては、まだちょっと使いにくい」と感じたので、他社の商品を分析したり、現場の先生から話を聞いたり、保護者から子どもの悩みをうかがったり。
さまざまな話を聞いた結果、「数字を最小限にできないか」という考えにたどり着きました。であれば、両面にするのはどうかと。表面には時計回りの数字だけを、裏面には反時計回りの数字だけを配置しました。
土肥: 両面タイプにしたのはユニークだと思うのですが、構造はシンプルですよね。であれば、他社からも同じような商品があってもよさそうですが、少し調べたところ、見当たりませんでした。なぜでしょうか?
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