なぜ、1000円超の分度器が人気なのか 測定メーカーがこだわった「4つのポイント」インタビュー劇場(不定期公演)(5/5 ページ)

» 2025年10月10日 09時22分 公開
[土肥義則ITmedia]
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これまでになかった分度器

村岡: 「分度器を使っている人」の発想でつくってきたからではないでしょうか。左からも「0」で始まり、右からも「0」で始まる。この点に不便を感じなければ、見やすさを求めようとは思いませんよね。

 むしろ、45度のところに「45」の数字を入れたら、使いやすいのではないか。50度のところも「50」の数字を、55度のところも「55」の数字を……といった具合に、便利だと思って数字をどんどん増やしていく。でも、分度器が苦手な人にとっては、どんどん使いにくくなっている。そのことに気付いていない人が多かったのではないでしょうか。

 あと、分度器を苦手にする人向けに、商品を開発しても、それほど売れないかもしれない。両面にすれば、どうしてもコストがかかってしまう。そうなると、単価を上げざるを得ません。「安ければ、安いほうがいいよね」という発想が一般的なので、逆に「そうではない分度器を開発しました」とは、提案しにくいんですよね。

両面タイプの完成に苦労した

土肥: 両面タイプを開発するうえで、苦労はあったのでしょうか?

村岡: 表の「0」と裏の「0」の位置を、きちんと合わせるのが難しかったことですね。「0」だけでなく、表の「90」と裏の「90」の位置も同じでなければいけません。何度つくっても微妙にズレてしまって。正確でなければ、商品としては使えないので、ぴたっと合わせるのに苦労しました。

土肥: 分度器の開発に携わって、何か気付きはありましたか?

村岡: 市場のこと“ばかり”を考えていたら、この商品は生まれなかったかもしれません。売り上げ、利益、コストといった数字はもちろん大切ですが、困っている人は誰か。その人たちをどうすれば助けられるのか。その視点がなければ、これまでになかった分度器は完成しなかったでしょうね。

(おわり)

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