しかし、株価の急騰は長続きしなかった。
株価は提携発表前よりも下落し、足元では1700円台で推移している。
コンプライアンス違反やガバナンス不全といったリスクを回避するため、急騰を「逃げ場」と認識した機関投資家の動きが主であったと推察される。
データセクションは10月8日、ウルフパック・リサーチのレポート公表当日に、即座に反論のIR(投資家向け広報)を発表していた。これによると「かかる事実は一切なく、断じて不正行為は行っておりません」「法令を順守したうえで、本件事業を進めております」と疑惑を全面的に否定した。
しかし、この反論はかけられた疑惑を正面から払拭するものではなく、「とにかく不正はしていない」という内容だった。レポートの核心部分に対する市場の疑念を完全に払拭するには至らず、特にリスク管理を重視する機関投資家などの売り圧力を抑えることは困難であったと見られる。
日本証券金融による増担保金徴収措置(増し担)の強化により、信用取引による投機的な資金流入が抑制されたことも一因だろう。
サイバーダインの事例が示すように、一度企業のガバナンスなどに疑念が生じると、それは機関投資家の長期的な投資判断に影響し、慎重な姿勢をとらせる要因として残り続ける可能性がある。そもそも、空売りレポートが市場で大きな注目を集めるのは、年に数回あるかないかの珍しい出来事だ。そのため、「火のないところに煙は立たない」と考えられる場合もあり、一定の信ぴょう性を持つこともある。
データセクションの株価が演じたこの乱高下は、「AI相場」の脆さを象徴しているのかもしれない。空売り機関の攻勢は、AIという未来的なストーリーに隠されたガバナンスや事業実体といったリスクを白日の下に晒した。
東急不動産との提携は、その疑念に対する「国産」かつ「クリーン」な実体という強力な反論材料となったが、サイバーダインの先例も脳裏をよぎる。この攻防が単なる投機的なマネーゲームに終わるのか、それとも日本のAI産業の健全な成長に向けた試金石となるのか。
ウルフパックが投げかけた問いは、データセクション一社の問題に留まらず、AI関連銘柄全体に漂う熱狂が「バブル」か否かという、日本市場そのものへの問いかけでもある。
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