多くの社員が自らAIツールをつくり、それを仲間とシェアし、現場の業務を変えていく──。楽天ではそんな光景が当たり前となっている。
約3万人の社員のほとんどが、社内向けAI「Rakuten AI for Rakutenians」を日々活用。非エンジニアも含め社員自らがつくったAIツールは、日報・月報の作成や営業の育成プログラム、翻訳や開発のテスト自動化プログラムなど、すでにその数は2万を超えている。
各社がAI活用に頭を抱えるなか、驚異的なスピードで「AI-nization」(AI化)を進められた背景には、何があったのか。そして、全社でAIをフル活用できるようになった先に、どんな未来を見据えているのか。
Sansanが提供する個人向け名刺サービスEightが主催した「AI-PAX 2025 第1回 AIの実践的な活用展」に登壇した、楽天グループ 執行役員大越拓氏(AI & Data ディビジョン AI サービス統括部 ディレクター)の講演「Rakuten AIが変える日本のビジネス:2万超のAIツールを生んだ日本語特化AI」の内容をもとに、実践的なAI活用のヒントを探る。
楽天でAIの取り組みが始まったのは、2024年のこと。OpenAIのChatGPTを皮切りに、世界中が生成AIに沸く中、代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は「楽天ではAIをフル活用するんだ!」と“AI-nization(AIナイゼーション)”を掲げた。これは、かつて2010年に「社内の公用語を英語に」と舵を切ったときの“Englishnization(イングリッシュナイゼーション)”をもじった造語である。
日本市場では、AIに特化したエンジニアやプロダクトマネジャーが不足しているが、15年前に英語を社内の公用語としたことで、楽天は外国人技術者の採用に成功しているという。「現在、私が統括しているAI組織で働くメンバーの7割以上が外国人。国籍は40〜50カ国に及ぶ。Englishnizationを呼びかけた当時は、まさかこうなるとは思っていなかった。今AI活用に必要なリソースを確保できているのは、楽天の強みの一つだ」と大越氏は語る。
AI活用を後押しする楽天のもう一つの強みは、膨大なデータの蓄積だ。楽天で運営するサービスは70超。それらを月に1度以上、利用しているアクティブユーザーは約4000万人にのぼる。この膨大な行動データをAIに掛け合わせることで、実生活で役立つAIを生み出せると睨(にら)んでいるのだ。
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