女性用パンティストッキングを主力としてきたアツギの2025年3月期連結決算は、売上高219億円(前年同期比3.2%増)、営業損失9億円となった。増収ではあるものの赤字で、営業赤字は2019年から7期連続と、厳しい状況が続いている。
総務省家計調査(2人以上世帯、全国)によると、婦人長靴下(ストッキング・タイツ)の購入量は2012年には一世帯当たり2.008足、支出金額585円だったが、2024年には0.771足、297円まで落ち込み、需要が長期的な減退傾向にあることが分かる。
足をきれいに見せるためにストッキングを履く文化自体が消えたわけではないものの、ジム通いやダイエットなどで体型を整えるという価値観の浸透により、今後も厳しい環境が続くとみられる。
これらのインナーウエアメーカーの苦戦は、市場の変化そのものがもたらしたものだ。
現在、ワークマンの参入などでリカバリーウエア市場が活性化しているが、本来この領域は老舗アパレル企業が強みを生かして先行できた分野だったはずである。実際に取り組みを進めている企業もあるが、競合の勢いに押され、存在感は限定的だ。
今後、技術力と歴史を持つ老舗企業が、どのようにブランド価値の再構築を図り、市場を開拓していくのか。引き続き注視していきたい。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
アパレルのトレンドは、誰がつくっているのか
なぜ、ファミマで「普通の服」を売ろうとしているのか 「ユニクロ並み」価格を実現できた背景Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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