生成AI時代、SFAは“用済み”なのか 現場のマネジャーが考えるべきこと「キレイごとナシ」のマネジメント論(5/5 ページ)

» 2025年11月10日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]
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SFA/CRMは「手段」であって「目的」ではない

 「生成AIが進化すれば、SFA/CRMは必要なくなるのでは?」

 という質問を、SFAベンダーにしたところ、やはり以下のような答えが返ってきた。

 「AIがSFAを置換するのではなく、SFAをサポートする役割となる」

 「顧客データベースを正しくメンテナンスしないと、本当のCRMは実現しない。AIのみでは不十分」

 実のところ、本件をChatGPT Proに相談してみたが、同様の答えが返ってきた。

 「SFA/CRMは「要らなくなる」のではなく、「OS化(裏方化)」する。人が画面に手入力する比率は激減し、UIは“営業用AIエージェント”に置き換わる。だが、取引先・商談・見積など)の“系統立てた台帳=System of Record”は残り続ける」

 どちらの返答にも共通しているのは「SFA/CRMありき」の思想、ということだ。

 忘れてはならないことがある。それは、SFAやCRMはあくまで「手段」であって「目的」ではない、ということだ。

 企業が本当に求めているのは、次のような効果である。

  • 営業プロセスの効率化
  • 売上予測の精度向上
  • 顧客関係の強化

 つまり、一言で表現すると「営業の生産性向上」なのだ。

 しかし多くの企業では、これらの効果が得られていない。導入・維持コストが重荷になり、期待された恩恵が得られないまま終わっている。コストがかかればかかるほど、生産性は下がる。システムにかけたコスト以上に売り上げをアップさせない限り、投資対効果は得られない。そのことは、現場の営業が一番分かっているのだ。

 「ここまでのコストをかけなくても、目標は達成できる。というか、逆に負荷が増えて、達成が遠のいている……」と。

 XなどのSNS上でも、SFAが「上司への報告ツール」化し、属人化を解消できないという声が目立つ。ツール導入後も入力の手間がネックで、運用が放置され、更新されないままになるケースが後を絶たない。

日本の営業文化とSFAの相性問題

 実のところ、日本の営業組織とSFAの相性は良くない。

 私が企業の現場に入って最もよく見るのは、次のような光景だ。週次ミーティングで予実績管理表を口頭共有し、マネジャーが経験ベースでアドバイスするだけ。SFAのデータがあっても、リアルタイム分析や予測モデル構築まで進まない。

 日本には、SFAを使う文化がほとんどないからである。それができるのは、まだ若いSaaS企業ぐらいだ。入社したときからSFAが活用され、データドリブンで営業活動をする文化が根付いている企業以外は、そのような文化を根付かせることができていない。

 着目すべきはシステムではない。マネジメントのスキルや意識でもない。組織文化なのだ。

まとめ

 生成AIの進化によって、SFAやCRMの在り方は大きく変わるだろう。淘汰されることはないが、「生成AIだけで十分だ」という声も広がるに違いない。高機能を求めるユーザーに限られるソリューションに変化していくのではないか。

 スマホが普及し、多くの人がスマホで写真を撮るようになった。そのせいでカメラの売れ行きは急減した(とはいえカメラは淘汰されていない)。これと同じ流れを辿るような気がしている。

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