埋没タイプと対極に位置するのが孤別タイプです。伝統的な組織規範の外側にあり、平成中期以降に生まれた若年層、時に「Z世代」などに多く見られる傾向があります。
このタイプは時に上の世代から「問題視」されがちですが、それは往々にして旧来の価値観で彼らを見ていることに起因します。彼ら本来の持ち味とはどのようなものなのでしょうか。
孤別タイプの最大の強みは、その鋭い問題意識にあります。伝統的な価値観に囚われないがゆえに、既存のやり方や常識に対し、これまでとは異なる視点から疑問を投げかけます。
例えば、この世代についてよく言われること、「プライベート時間の重視」「理不尽なことへの耐性の低さ」「意味を感じないことへの忌避」といった声は、一見すると個人的な主張に見えるかもしれません。
しかし、よく考えてみると、どの世代にとっても、プライベートが充実すること、理不尽なことが減っていくこと、意味のない仕事を減らしていくことは重要です。上の世代は、「これまでの常識」によって、このようなある意味当たり前の視点を持ちにくくなっているのかもしれません。
彼らの問題意識は、実は「将来的に組織を良くしていくための建設的な問題提起」として活用できるのです。「理想は分かるけれど現実は難しい」という声ももちろんあると思います。しかし、変化が速く、テクノロジーが可能性を広げる現代において、こうした問題意識に真摯に向き合うことで、組織は大きな進化を遂げる可能性があります。そうでない組織は旧態依然としたままに時代に取り残されるリスクがあります。
一方で、孤別タイプの弱点は、仕事やスキルに熟達することが容易ではない点です。ビジネス領域をはじめどんな分野でもスキルを向上させていくためには時間と、困難を乗り越える努力が必要です。プライベートの重視が仕事への深いコミットメントを薄めたり、情報過多な環境で育ったがゆえに「隣の芝生の青さ」が他の世代よりも目に入り迷走しやすかったりと、このタイプは「熟達への道」を歩むことの難しさがあるのだと思います。
もちろん、「石の上にも三年」のような、意味のない我慢を強いることが良いわけではありません。しかし、目先の感情だけでなく、深い経験の蓄積が成長につながることを理解し、組織もまた、彼らが意味と達成感を感じながら熟達できるような学習機会を提供する必要があります。
今回は、埋没タイプと孤別タイプを見てきました。
それぞれのタイプの強みを引き出しあい、弱みをカバーしあうような関係を組織内に構築することが大切です。コミュニケーションが通じにくい(それは事実です)からといって、疎遠になるのではなく、難しくとも信頼関係や人間関係を築く努力を双方が行なうことで、単に「人間関係の改善」を超えた、企業組織全体の発展と進化、そして個々人の仕事と人生の充実に近づいていくことができるのです。
次回は、埋没タイプと孤別タイプをつなぐ役割を担う「半身タイプ」の詳細と、各タイプ間での効果的なコミュニケーション方法について解説します。
ベテランは距離を置き、若手は黙って去る――「職場断絶」のリアルと、その処方箋
ジョブ型移行で求められる「会社依存」からの脱却 自立するための3つのヒント
ジョブ型雇用、なぜ根付かない? 制度が形骸化するワケ
なぜ「ジョブ型雇用」は機能しないのか? 弱点を補う術は
「話を聴けない上司」にならないために 意識すべき2つのポイントとは?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング