前回のコラムは、組織内の分断がテーマでした。「伝統的な組織文化・規範」に心理的に距離感が近いか、遠いかによって、 社員を「埋没タイプ」「半身タイプ」「孤別タイプ」の3つのタイプに分け、それぞれの特徴を解説しました。
(関連記事:ベテランは距離を置き、若手は黙って去る――「職場断絶」のリアルと、その処方箋)
それぞれのタイプを簡単におさらいしておきましょう。
今回も引き続き、組織内の分断をテーマに考えてみたいと思います。
今回は特に「埋没タイプ」と「孤別タイプ」に焦点を当て、彼らの持つ強みを最大限に生かし、同時に潜在的なリスクをどう回避していくかに迫ります。
株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー。
クラシック音楽の作曲家として長年活動。自身の芸術分野での経験をビジネスに応用し、創造的な社会と組織をつくる支援をライフワークとしている。
主に人事分野において、教育体系構築、採用戦略策定、人事制度策定等を実務で経験、さらに創造的な組織文化醸成に積極的に取り組んだ。
スコラ・コンサルトでは、人事課題をはじめ、組織開発、ミッション・ビジョン・バリュ−策定、戦略ビジョン構築など、経営課題の全般にわたり、本質的な経営課題をあぶりだすアプローチを得意とする。共著に『わたしからはじまる心理的安全性』(翔泳社)。
現代のビジネス環境は、複雑かつ流動的であり、一つの画一的な価値観や特性だけで組織が対応することは困難です。だからこそ、さまざまな世代のユニークな価値観から生まれる多様な個性が共存し、互いに影響し合う組織づくりが求められています。
しかし、異なる価値観が乱立することは、深刻な分断のきっかけにもなりかねません。特に、これまで同質性を重んじてきた日本社会において、「異なる他者」とどう向き合い、協働していくかは、現代の経営における重要なテーマと言えるでしょう。
真に強い組織を築くためには、3つのタイプが互いを深く理解し、それぞれの強みを引き出し、弱みを補完し合う関係性を構築することが不可欠です。
埋没タイプは、伝統的な組織規範に深く同化している傾向があり、主に昭和期に生まれたベテラン層に多く見られます。埋没タイプの特性を組織に最大限に生かしていくにはどうしたらよいのでしょうか。
埋没タイプが長年培ってきた豊富な経験と技術は、日本社会の基盤を支えてきた貴重な財産です。しかし、「失われた30年」と言われる時代の中で、これらの知見が十分に次世代へ伝承されていない現状があります。世代間でのコミュニケーションの難しさから、次世代への伝承を諦めてしまうケースも少なくありません。
インフラ老朽化など社会全体で技術継承が喫緊の課題となる中、埋没タイプのノウハウは今後ますます重要性を増します。さらに、AIが物理的な領域へと進化するにつれ、日本のモノづくりに蓄積された「暗黙知」や技術は、AIとの統合において大いに活用されると期待されます。
若い世代とベテラン世代は、互いにコミュニケーションの難しさを感じることがあると思いますが、相互に相手を理解しようとする姿勢を持ちながら、より大きな目的のためにも、ノウハウ・技術をしっかりと渡していく、受け取っていくという関係を構築することが望ましいのです。
埋没タイプは、組織や社会、コミュニティに対する高い貢献意欲を持っています。組織が健全な状態を保ち、安心して活動できる場であり続けるためには、個々人のこの貢献意欲が不可欠です。彼らの意欲を継続的に引き出し、組織の安定と発展に寄与する役割を与えることが重要です。
一方で、埋没タイプが取り組むべき課題もあります。
組織と自己が強く同一化しているため、組織を離れた後の個としてのアイデンティティが未発達になりやすいという問題です。これは、定年後の「燃え尽き症候群」として表れることがあります。
人生100年時代において、組織が個人のキャリア全てを包摂し続けることは現実的ではありません。埋没タイプには、組織外で自身の「好き」や「得意」を探求し、地域活動、趣味、社会貢献など多様なフィールドで新しい人間関係を築き、これまでの経験を社会にも還元していくことが求められます。
ベテランは距離を置き、若手は黙って去る――「職場断絶」のリアルと、その処方箋
ジョブ型移行で求められる「会社依存」からの脱却 自立するための3つのヒント
ジョブ型雇用、なぜ根付かない? 制度が形骸化するワケ
なぜ「ジョブ型雇用」は機能しないのか? 弱点を補う術は
「話を聴けない上司」にならないために 意識すべき2つのポイントとは?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング