有数の小売チェーンとなったトライアルだが、その狙いは西友の買収で完了ではない。
実はかつて、世界最大の小売企業である米ウォルマートが、日本市場攻略のために西友を買収し、経営改善に努めたものの実現せず、ファンドに売却して事実上撤退している。その後ファンドによって売上は4800億円まで回復し、収益面も大幅に改善したが、これはあくまでも売却を視野に入れたコスト最適化の範囲にとどまり、次の成長を生む土台にはならなかった。そのため、トライアルが持続的な成長戦略を示せなければ、今回の買収は単なる財務改善で終わってしまうだろう。
トライアルHDはこうした事情を踏まえて西友の買収を踏み込んでおり、西友を活用した新たな成長戦略を描いている。それが、西友の店舗網を活用したトライアルGOの首都圏での展開強化だ。
図表2は、トライアルが公表しているトライアルGOによる首都圏攻略作戦のイメージ図である。この戦略の中核をなすのは、西友の既存店を活用した商品供給と、テクノロジー活用による低コストの実現にある。トライアルGOを西友の既存店のサテライトと位置付け、母店である西友の既存店から生鮮や総菜などを高頻度で配送することで、バックヤードのない小型店でも、高鮮度でできたての食品を提供する。
日本では、スーパーの生鮮品や総菜は店舗内のバックヤードで小分けにし、パック詰めすることが基本とされてきた。しかし、サテライト供給によって、バックヤードのない小さい店でも同じことが実現できるようになった。
この発想は、まいばすと同じだ。ただ、まいばすを運営するイオングループは、首都圏に加工センターやセントラルキッチンを構築しており、そこから供給している点が異なる。トライアルがサテライトを採用したのは、首都圏にイオンのような加工センターがないためだ。そこで、西友の既存の店舗網を活用し、できるだけ早期にイオンに追い付こうとしているのである。
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