さて、経済分野に限らず、ニュース報道というものがポジショントーク的になってしまう問題がご理解いただけたと思うが、次に問題となるのは、このような報道結果が偶然かどうかである。
答えはノーだ。「中国人観光客が減っても影響は限定的」というニュースを報じるメディアは「中国人観光客が減っても影響は限定的」という地域を狙って取材をするし、その逆のニュースを流したいメディアは中国人観光客が押し寄せている地域へ“わざわざ”出かけて被害の大きさを強調している、という動かしがたい現実があるのだ。
分かりやすいのは、『テレ朝NEWS』が11月25日に報じた「紅葉絶景に中国客 一方で大打撃も…観光明暗 渡航自粛『損失2000万円』のホテルも」である。これは「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で放映した内容を書き起こしたものだ。
このワイドショー報道には「元ネタ」がある。11月19日に地元局『東海テレビ』が報じた以下のニュースである。
この時点での報道内容は「今回の中国政府の渡航自粛の呼びかけで団体ツアー客を中心に1000人規模のキャンセルが出て困ったなあ」というくらいの話だ。しかし、それが6日後には「大打撃」「損失2000万」という感じで「被害」を強調する内容にバージョンアップされているのだ。
なぜワイドショーが取材をすると「被害」が大きくなるかというと、もともとこの地の観光業は中国人観光客の恩恵を得ていた。つまり、先ほどの東京・浅草と対極に位置する「中国依存」の強いエリアだからだ。
豊橋市ではこの傾向が顕著だ。中国人宿泊者数は昨年4〜9月の2085人から今年には3万1230人へと約15倍に急増し、訪日外国人のうち、中国人が58%を占める。蒲郡市でも昨年度は外国人宿泊者の83%を占めた」(2025年11月24日 東愛知新聞)
中部エリアは、名古屋城、犬山城、紅葉スポットの香嵐渓(こうらんけい)などが点在し、東京や京都などに飽きた「中国人観光客リピーター」が長期滞在する傾向がある。愛知県の「訪日外客動向調査」で県内の滞在日数を国別に見ると、中国人観光客は7.55日で、韓国人観光客の3.66日に比べて圧倒的に長い。宿泊日数が延びれば落ちるカネも多くなることは言うまでもない。
こういう「中国依存」の強い観光地に、テレ朝取材班は東京から“わざわざ”やって来て「中国人観光客がいなくて大変スね」と嘆きの声をかき集めた。「被害の深刻さをあおりたい」という「意図」があるとしか思えないではないか。
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