マーケティング本部の新設に当たり、竹山氏らは外部から招いたスペシャリストの指導の下、新商品開発に本腰を入れる。ユーザー調査も検討したが「早く商品を出さなければ」というプレッシャーが強かった。そこで「自分たちもユーザーの一人である」として、開発メンバーに多かった女性の意見を基に商品開発が進められた。
こうして生まれたのが、カップ入りリキュール「女王様のお気に入り」(2013年発売)である。自社の社名に由来する遊び心を持たせたネーミングや、銀色が主流だったキャップをカラーキャップにするなど、女性の目に留まるような挑戦的なパッケージで売り場に投入した。
しかし、結果は惨たんたるものだった。「全く売れませんでした」と竹山氏が苦笑するように、発売後たった1年で終売となってしまった。販売実績は、従来品の「ゆず酒」「梅酒」を合わせた6割程度にとどまり、撤退を躊躇(ちゅうちょ)している状況ではなかった。
竹山氏は、売れなかった理由を多角的に分析し、次のような悪循環があったことに気付く。
1つ目は、売り場のミスマッチだ。「女王様のお気に入り」は常温売り場に置かれていたが、この売り場は女性があまり足を踏み入れない場所だった。
2つ目は、従来品として一定の人気があった「ゆず酒」「梅酒」を売り場から下げ、「女王様」に完全に切り替えたことだ。
「女王様のお気に入り」が女性向けを前面に押し出したパッケージであるため、これまで従来品を購入していた既存の男性客が置き去りになり、客離れを招いてしまったのである。「新商品の発売なんだから、従来品から少しずつ切り替えるのではなく大々的に売り場に並べるべきだろう」という社内の声に押された結果である。
竹山氏は「お客さまがどういう気持ちで商品を発見し、購入するのか、考えられていませんでした」と振り返る。
パッケージへのこだわりが誤った方向に向き、社内から飛んでくるさまざまな意見に流され、会社本位のエゴを優先した商品開発になってしまった。これが最大の敗因だと竹山氏は振り返る。
しかし、キング醸造には「失敗をさせてくれる会社」という土壌があるという。竹山氏らは「だめだったらすぐにやめて次へ」を徹底するチャレンジ文化の下、方針転換を図った。
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