スウェットの上下が1098円――。ちょっと信じられない価格だが、ゲオはどのような方針で売価を決めているのか。素材を安く仕入れたので、「じゃあ、1098円で」なのか。それとも「価格は1098円で」と決めてから、素材を仕入れるのか。答えは、後者である。
商品を開発するにあたって、さまざまなコストを見直した。例えば、メーカーや商社などを通さずに、工場から直接仕入れることで、利益がでるように工夫を凝らした。このほかにも、物流コストを改善したり、保管コストを抑えたり、人件費を精査したり。「ここも見直して、あそこも見直して」といった具合に、何度も改善を重ねて、ようやく商品が完成した。
で、次に何をしたのか。「大量生産→全店で販売」といった流れではなく、まずはテスト販売である。10店舗ほどで販売して、お客の反応はどうなのか、売り上げはどうなのか、改善すべきはどこなのか、といったことを検証するという。
スウェットの場合、2022年と2023年にテスト販売を実施。「もう少し暖かく感じられるほうがいいよ」といった声があったので、「裏起毛」の素材を使うことに。2023年には3万着を販売したところ、あっという間に完売。この結果をもとに試算したところ、「ワンシーズンで30万着は売れるはず」といった見通しが立ったので、その数を生産した。そして、冒頭で紹介したように、現在は30万着に迫る売れ行きなのだ。
それにしても、なぜゲオは低価格にこだわるのか。スウェットの試作品を目の前にしたとき、社内からはこんな言葉が飛び交ったという。「生地がペラペラじゃないか。こんな商品が売れるのか」と。
開発を担当した松岡良房さんも、ペラペラなことはよく理解している。価格を2000円にすれば、違う素材を使うこともできる。それを使えば「ペラペラ」とは言われなかったはずだ。
にもかかわらず、なぜ1098円にこだわって、社内から疑問の声がでてくる商品を開発したのか。「アパレル市場において、ゲオは後発組なので、競合他社と同じことをやっても勝負にはなりません。だから『1098円』という価格を変えるつもりは、全くなかったですね」(松岡さん)
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