こうして見ると、企業とユーザーは完全に対立しているように見える。企業が条件を絞り、ユーザーが怒り、離反する。よくある対立の構図だ。
だが、待ってほしい。
そもそも、なぜポイントプログラムには「抜け道」が存在するのか。企業がその気になれば、こうした“抜け道”は最初から塞げる。チャージを集計対象外にする、還元率に上限を設ける、対象店舗を絞る。技術的には難しくない。
だが、それを徹底すると話題性が生まれない。
SNSでバズるのは「こんな裏技がある」「このルートで還元率3%」といった情報だ。ポイ活インフルエンサーたちは、こうした「攻略法」を発信することで再生回数を稼ぐ。その情報が拡散されるたびに、企業のサービスは無料で宣伝される。企業は、ある程度の「穴」を意図的に残している。ギリギリのラインを攻めているのだ。
では、ポイントだけ取って去っていく層はどうか。サービスを継続利用する気などさらさらなく、キャンペーンの旨味だけ吸い取る。企業にとって迷惑な存在に見える。
だが、彼らはSNSで情報を拡散する。「今なら◯◯カードで1万ポイント」「このルートがアツい」。その投稿を見た一般ユーザーが、サービスに興味を持つ。企業が本当に取り込みたいのは、ポイ活マニアではなく、その先にいる「普通の利用者層」である。いわば無料の広告塔である。企業もそれは承知で、キャンペーンを設計している。
この構造を最もうまく使っているのが楽天だろう。まず分かる人だけが分かる方法を用意して話題を作り、ユーザーを集める。SNSが盛り上がり、新規会員が増える。そして、これ以上の新規獲得が見込めなくなったタイミングで、条件を絞る。
「改悪だ!」と叫ぶ声が上がる。だが、叫んでいるのは誰か。多くはポイントだけ取りたいマニア層だ。彼らが離れても、楽天市場で普通に買い物をする一般ユーザーは残る。むしろ、採算の悪い「ポイント泥棒」が去ってくれるなら、企業としては願ったりかなったりである。
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