毎月「5万時間」を創出 ソニーが語る“一番影響が大きかった”AI施策とは?AI時代の「企業変革」最前線(5/5 ページ)

» 2025年12月15日 06時00分 公開
[中出昌哉ITmedia]
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思い込みが一番怖い 毎日「知識のリフレッシュ」をする方法

中出: 生成AIにおける大場さんご自身の哲学的な考えや大事にしているマインドセットはありますか?

大場: 一番こだわっているのは“知識のリフレッシュ”です。技術の進化が速すぎるので、「こうだよね」という思い込みを持つことが一番怖いと考えています。

 AIを推進する立場として、常に「情報の鮮度」と「ガイドの仕方」に注意しています。生成AIを担当して約3年、多くのクラウドプラットフォーマーやモデルプロバイダーと、ほぼ毎月コミュニケーションを取っています。最新の情報とロードマップを入手して頭をリフレッシュし、常に最前線に立てる状況に身を置くよう心掛けています。

 AIを取り巻く環境は、現時点で想像できることを大きく上回る可能性があり、良い意味で不確実性が高いと考えています。そのため、チームの行動指針となるOKR(目標達成を促すフレームワーク)は大切にしますが、その実現のための施策と施策の実行を測るためのKPI(重要業績評価指標)は、柔軟に変えて価値の最大化を考えるべきだと考えています。AIの進化と変化に対応し、常に変化できるチーム作りを意識していますし、そのチームを率いる上でも先端の情報をできるだけ吸収するよう努力しています。

大場: いつでも手軽にチェックできるという点で良く使っているのは「SmartNews」と「Google News」です。広範な情報をさっと把握でき、日常的に通勤や食事の時間に記事を見ています。

 ニュースを見るだけではなく、自分が興味を持つ、アンテナを張っている情報を見つけた際には、ソースとなるプロバイダーやプラットフォーマーのサイトにもアクセスします。複数の情報源から裏付けを取り、詳細を確認しています。

 自分が深堀りしたいテーマをいくつか決めておくだけでも、ニュースサイトの見え方はだいぶ変わってきますし、ルーチン化することで変化の速さを体感しながら楽しむこともできるかなと思っています。

 新しい技術へのアンテナを高く保ち、社外の技術動向をとらえることは大切ですが、社内やチームにおける多様な視点での技術情報の共有も重要です。

 実際に、私のチームでは面白いと思ったAI関連のニュースや調査、学術論文などをさっと共有できる環境を用意していますが、個人の関心事や専門性によって多様な視点で情報発信がなされ、最新技術が伝搬しています。メンバー自らが発信者となることで個人の専門性が高まり、コミュニティ内で相乗効果が生まれ、知識が底上げされると考えています。

左:ソニーグループ AIアクセラレーション部門 責任者・大場正博氏、右:テックタッチ取締役 CPO/CFOの中出昌哉氏(提供:テックタッチ)

大場正博

ソニーグループ株式会社 デジタル&テクノロジープラットフォーム AIアクセラレーション部門 部門長/Sony Outstanding Engineer 2023

2002年ソニー株式会社入社、情報システム企画として経営情報、CIOスタッフ、B2E改革を担当。ITアーキテクトとしてソニー欧州(英国)に赴任の後、ワークスタイル改革およびグループ構造改革を担当。2019年よりCIOオフィスGM、2021年よりグループガバナンスGMを経て、2023年より現職にて、DXガバナンス/Generative AIを推進。

中出昌哉

テックタッチ株式会社 取締役 CFO / CPO兼AI Central 事業責任者

テックタッチでは、「AI Central」(AI技術を活用した新規事業開発を担う専門組織)の事業責任者としてAI戦略をリード。プロダクト戦略責任者(CPO)および財務責任者(CFO)も担う。一般社団法人日本CPO協会の理事も務める。

東京大学経済学部、マサチューセッツ工科大学(MIT)MBA卒。野村證券株式会社にて投資銀行業務に従事し、素材エネルギーセクターのM&A案件を多数手がける。その後、カーライル・グループにて投資業に従事。ヘルスケア企業のバリューアップや、グローバル最大手の検査機器提供会社への投資等を担当。テックタッチには2021年3月、CFOとして入社。


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