ミタセルの事業は順調に成長しているが、話を聞けば聞くほど運営の複雑さも見えてくる。最大の課題は、ベンチャー企業としての「迅速なスケールアップ」と「品質維持」とのバランスだと佐々木氏は話す。
「スピーディーに展開したい考えはありつつも、商品開発は妥協せず、シェフが納得する品質を追求しています。開発期間は早ければ2〜3カ月ですが、長いと1〜2年かかります。生産効率や原価率にも配慮しながら、シェフの理想を再現するのに毎回苦労しています」(佐々木氏)
例えば、フレンチレストランのSimplicite(サンプリシテ)とRestaurant Ryuzu(レストランリューズ)では、それぞれ「贅沢シーフードカレー」(2970円)と「生キャラメル入り濃厚テリーヌショコラ」(3240円)の開発に1年以上を要したという。
これほど時間がかかるのは、冷凍食品ながら店舗と変わらないクオリティーにこだわるためだ。ミタセルでは、飲食店から預かったレシピをもとに、自社の専属シェフが手作りを前提に開発している。冷凍加工や解凍の工程を経ても店舗で提供するときと同等の品質にするには、火入れなどのレシピを微調整しなければならない。
「冷凍食品向けのレシピ開発ノウハウは、多くのシェフが持ち合わせていません。ですので、店舗で提供している状態をゴールとし、そこから逆算して開発を進めています。食材によって最適な冷凍技術も異なり、当社では3〜4種類の冷凍機材を使い分けています」(佐々木氏)
また、冷凍技術の限界もあり、天ぷらは現状サクサク感の再現が困難とのこと。本格的な味わいをウリにするゆえ、必然的に難易度は上がる。ミタセルでは、品質を守りながら30〜40代の層にも利用者を広げていきたい考えだ。
1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。一般社団法人 日本デジタルライターズ協会会員。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や2020年〜約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月〜は東京拠点。
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