オリオンビールの“味の守護神” 27歳エース社員が語る、仕事へのこだわり教えて!あの企業の20代エース社員(1/2 ページ)

» 2025年12月16日 07時00分 公開
[長濱良起ITmedia]

 沖縄といえば、オリオンビール――。製造・販売する同社(沖縄県豊見城市)の製造工場は、名水の地として知られる本島北部・名護市にある。

 この工場で働く“20代エース社員”が、醸造課主任の尾﨑紀恵さん(27)。商品製造や品質管理など、商品そのものを左右する重要な役割を担う、“味のゴールキーパー”だ。

 現場社員の心持ちがビールの味にそのまま反映されていくという製造の世界。上司は尾﨑さんの仕事ぶりについて「彼女の真面目で好奇心旺盛な性格が、幅広い分野で仕事をこなす行動力につながっています。職場メンバーの良い刺激になっています」と太鼓判を押す。

 そんな彼女は、どのように“オリオンの味”を守り続ける努力をしているのか。

オリオンビールの“味のゴールキーパー”、醸造課主任の尾﨑紀恵さん(筆者撮影)

著者プロフィール:長濱良起(ながはま よしき)

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沖縄県在住のフリーランス記者。音楽・エンタメから政治経済まで幅広く取材。

琉球大学マスコミ学コース卒業後、沖縄県内各企業のスポンサードで2年間世界一周。その後、琉球新報に4年間在籍。

2018年、北京に語学留学。同年から個人事務所「XY STUDIO」代表。記者業の他にTVディレクターとしても活動。

著書に『沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!』(編集工房東洋企画)がある。


ビールの香りに包まれて――27歳主任が守る“オリオンの味”

 和歌山県田辺市出身の尾﨑さん。紀伊半島の山あいの街でありながら、海岸部の市中心部には海水浴場や港もある。山と海が共存するという意味では、現在の職場がある名護市にも似ている。

 工場の敷地に入ると、植物なのかでんぷんの匂いなのか、甘さのあるような、独特の匂いに包まれる。これこそが、ビールの製造過程で生まれる麦汁の香りだ。

 尾﨑さんの業務内容は、麦芽やホップなどの原料から麦汁を作り、それに酵母を加えてビールを作っていくという製造工程の管理。産地や収穫時期など原料の状態によって製造工程を微調整し、商品のクオリティーを担保しながら、製造ラインが滞りなく適切に動作しているか24時間体制で監視していく。

製造ラインが正常に動作しているか常にチェックする尾﨑さん

 味覚の数値やアルコール度数は数字でも確認できるが、最後はやはり人間の感覚が頼りになる。尾﨑さんはその品質評価を行う「官能検査員」の資格も持っている。

 複数の官能検査員が毎日、品質管理関係の部署と連携しながら、オリオンビールの“いつもの味”にゴーサインを出す。

酵母は“生き物”――20代で気付いたビール造りの奥深さ

 尾﨑さんがビール造りの道に進んだのは、偶然と言えば偶然かもしれない。自身の将来について明確なものが描けなかった高校時代。全国各地の大学を調べていく中で、ピンときたのが、琉球大学のWebサイトに書いてあった「亜熱帯の沖縄でしかできない『農学』」という文だった。

 「なんか楽しそうだな、と。理系ではあったので、とりあえず新しい環境に飛び込んでみようという気持ちで、琉球大学農学部に進学しました」

 この「とりあえず新しい環境に飛び込んでみよう」という言葉は、後述する尾﨑さんのチャレンジ精神を象徴するものでもある。

 大学で受けた授業の一つ「泡盛醸造学」は、まさに沖縄ならではの学問だった。実際に酒を造る実習形式の授業を、「毎日お世話したり、様子を見たりして。年末でも地元に帰れないぐらい付きっきりでした」と発酵を扱う大変さを振り返る。「生き物を相手にして製品を作るって、難しいし面白い」と、その魅力に気付いた。

 その気持ちは、オリオンビールで働き始めて5年目の今も変わらない。

 「使う酵母の種類は製品ごとに違っています。ただ、同じ酵母を使っていても、温度とか(麦汁の)栄養状態で違う性格を見せてくれたりします。酵母が本当に生きていることが実感できて『今回調子悪そう』とか『どうやったら元気になってもらえるんだろう』と考えながら接しています。ビール造りは可能性が無限大で、終わりのない感じが楽しいです」

 酵母について「性格を見せてくれる」「元気になってもらう」と、擬人化した表現で話す尾﨑さんの姿に、ビール愛の強さを感じられる。

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