本松氏は将来的にはハブ型になると認める。では、その時代はいつ来るのか。
「ハブ型が実現するには、ガバナンス機能やSaaSを呼び出すインタフェースを備えたAIエージェントが必要だ。でも、誰がそれを作るのか」
GoogleやOpenAIが出してくれば、一つのきっかけにはなる。だが本松氏は懐疑的だ。
「GoogleにしろMicrosoftにしろ、基本的には『業務汎用』のツールを作ってきた。特定業務に特化したものは市場が狭くて、リターンが小さいから作らない。Salesforceぐらいの規模でも、彼らから見れば『小さくてやらない』だ」
バックオフィス業務のフロントになるAIエージェントを、巨大テック企業が作るモチベーションはあるのか。本松氏は首を傾げる。
「われわれのような業務特化のベンダーがビジネスできる余地は、まさにそこにある。彼らがやらない領域だからこそ、われわれが存在できている」
では、ラクス自身がハブ型のフロントAIを作る可能性はどうか。
「正直、そこまでニーズがあるか分からない。バックオフィス業務の効率化をシステムとして作ってきた経験からすると、チャットベースのフロントエンドが最適かというと、必ずしもそうじゃない」
結論として、本松氏は「2030年頃までは現行モデルが維持できる」と見る。
「汎用型のフロントAIエージェントは、まだ影も形もない状態だ。2020年代のうちにハブ型がメインになるのは難しいだろう。ただ、我々はいつでもAPIを開発できるよう準備はしている」
備えはする。だが、焦らない。それがラクスのスタンスだ。
最後に、ラクスのAIに対する基本姿勢を聞いた。
「われわれがSaaSで勝ってきた一番の理由は、ずっとお客さまのニーズにシステムとして応えてきたからだ。AIは道具でしかない。これがわれわれの考え方だ」
「AIにベットする」という発想はしない。AIを入れても売り上げが伸びるわけではないし、本当に顧客の課題解決に役立っているのか、常に問い直す必要がある。
「お客さんはAIが欲しいんじゃない。業務の課題を解決したい。『AIだから入れる』というお客さんは、たぶんいない」
SaaS is Dead論に対する、ラクスの答えはこうだ。
SaaSとAIは殺し合う関係ではない。ルールベースで100%の精度が求められる領域はSaaSが担い、幅のある判断や入力補助はAIが担う。役割分担による共存──。それが、ラクスの出した結論だった。
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