ディズニー内でアプリが使用されるようになってから、攻略サイトやYouTubeでの解説、最新の混雑予想カレンダーのチェック、SNSで共有される「勝ちパターン」のスケジュールといった情報を事前に収集し、当日に備える人が増えました。
高騰するチケット代やパーク内での課金に加え、遠方からの宿泊前提の来園者もいます。「できることなら、無駄なく、たくさんの楽しい体験を詰め込みたい」と最大限の楽しみを求めるのは自然なことです。
結果的に、情報や事前準備に乗り遅れると、「人気アトラクションにほとんど乗れない」「レストランも行列続きで落ち着いて食事ができない」といった体験になりやすく、「ちゃんと調べてこなかった自分が悪い」と感じてしまう構造も同時につくられてしまいました。
これは「情報をうまく整理して活用できる人」「情報が多すぎて処理しきれない人」の間で、体験の差が”楽しさの差”として錯覚させられているとも考えられます。
「全部知っていないと楽しめない」というのは、情報社会特有の“感覚格差”が、テーマパークという限られた1日であったり、スマホと睨めっこする他の来園者が見えたりしてしまうことにより、分かりやすく表面化している状態ともいえます。
ここで重要なのは、そもそも「最大限楽しむ」という言葉の中身が、人によって全く異なるはず、ということです。例えば、同じ1日でもパーク内での過ごし方には以下のようにバリエーションがあります。
同じ「最大限楽しむ」でも、重要な指標が「アトラクションの数」「子どもの機嫌」「パレードの位置取り」「風景を楽しむ余白」のどれなのかによって、最適な1日の形は全く変わるはずです。これこそ「その人の、その時のシチュエーションに合わせて変わる」というユーザー体験の本質なのではないでしょうか。
しかし、現在の公式アプリやネット上に公開されている多くの攻略情報は「できるだけ多くアトラクションに乗る」「人気アトラクションを取りこぼさない」といった“効率重視モード”に寄りがちです。
その結果「そういう楽しみ方が合う人」にとっては心強い一方で、そこにフィットしない人にとっては「このテンションについていけない自分は、うまく楽しめていないのかもしれない」という息苦しさにつながっているのかもしれません。
ディズニー側も、魔法を支えるテクノロジーが魔法を削るテクノロジーになっている、この“息苦しさ”に気付き始めています。冒頭で触れた、イマジニアリングのチーフ・クリエイティブ・オフィサーの「ゲストがスマホに視線を落とす瞬間、パークの魔法が途切れてしまう」という発言はこれらの問題意識から出てきたものです。
パークは、建築や音楽、香り、光、キャストとのやりとり、たまたま目に入った風景やショーなど、「スクリーンの外側の情報」が連続している空間です。そこに「画面を更新する」「抽選結果を確認する」「空き枠を探す」といった行為が入り込むと、どうしても「目の前の世界」より「手の中の世界」を優先してしまう瞬間が増えます。
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