ここまで見てきたことは、そのまま他のサービスやプロダクトにも当てはまります。例えば、ディズニーの事例から引き出せる問いを、3つに整理してみます。
1. 「最大限の価値」を、勝手に1つに決めつけていないか?
「この機能を一番使いこなせる人」が前提になっていたり、「ヘビーユーザーの理想形」だけを基準にしていないでしょうか。ユーザーによって「最大限」の定義は異なります。
ディズニーでいう「アトラクション数」「子どもの機嫌」「雰囲気や思い出」のように、自社のサービスでも「何を大事にする人がいるか」をあらためて棚卸ししてみる必要があるかもしれません。
2. 情報や機能の出し方が「情報疲れ」や「自己責任感」を生んでいないか?
アプリ上にたくさんの機能を搭載することが、必ずしもユーザー体験の向上につながるとは限りません。サービスの多機能化が進むことで、特定の機能が埋もれてしまい、熟練者しか見つけられない状態になっていないか。利便性向上のための機能がサービスを必要以上に複雑にしていないか。
ディズニーのように「攻略できる人」と「できない人」の差が、そのまま「楽しさの差」に見えてしまうと同様に、アプリを「使いこなせない自分が悪い」という自己責任感を強めてしまう可能性もあります。
3. デジタルとアナログ、どこを切り取っても“良い体験”を用意できているか?
アプリやWebのUIだけをアップデートして、オフラインの導線を置き去りにしていないでしょうか? 個人的には、日本はまだその逆で、アナログをベースとした体験施設のWebサイトやスマホアプリの作り込まれなさに愕然(がくぜん)とすることが多いのが正直なところです。
デジタルが苦手な人にも、アプリやスマホで効率的に情報を収集したい人にとっても「自分なりに最大限楽しめた」と思ってもらえる仕組みがあるでしょうか。
自社のサービスでも、Webと店舗、アプリとコールセンター、オンラインと営業現場といった複数の接点のどこを切り取ってもユーザーに最適な体験を提供できているかどうかが問われているのだと思います。
東京ディズニーランド/シーは、テクノロジーを駆使した「巨大なサービス」として、これからも進化し続けるでしょう。スマホがその裏側を支える強力な道具であることは、きっと変わりません。ただ、その道具が前に出すぎると、「夢と魔法の国」本来の「魔法」を削ってしまうこともある――。
繰り返しになりますが、大事なのは一人ひとりの「最大限楽しみたい」という気持ちを尊重しながら、その人、そのシチュエーションに合った「ちょうどいい情報」と「ちょうどいいナビゲーション」を届けることです。
テーマパークに限らず、あらゆるサービスやプロダクトが、さらに多様化していく世の中と向き合いながら、UXデザインの本質であるこの考え方をどうソリューションに落とし込んでいくのか。その試行錯誤のプロセスを、これからも本連載を通じて、読者のみなさんと一緒に追いかけていきたいと思います。
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