――企業はアートとどのように関わっていくべきなのでしょうか。
今回のテーマ自体は、アートとビジネスの可能性を探るところにあったと思いますが、可能性は幅広いと感じています。一つポイントとしては、超一流のアーティストが、必ずしもビジネスと相性がいいとは限らない点です。逆に言えば、アート側・ビジネス側の双方にとって相性のいいカテゴリーやアーティストがいるはずで、必ずしも「トップビジネス×トップアーティスト」だけが正解ではないと思います。
会社全体ではなく一つの事業部にアーティストが入ることで、社内コミュニケーションが活性化する可能性もあります。または、新規事業開発の局面では別の素養を持つアーティストの方が良い掛け合わせとなり、化学変化が起こるもしれません。
デザインとビジネスは、経営判断からプロダクトデザインまで多様なレイヤーで結び付いてきましたが、アートとビジネスにおいても近しい事象が起きてくると思います。
――直島が多くの人に支持され続ける理由は、どこにあるのでしょうか。
正直なところ、明確に「これだ」と言い切れる理由はないです。ただ、半年に1回、あるいは年に1回といった単位で繰り返し足を運ぶリピーターは確実に増えてきたように思います。
その理由は、何も変わっていないように見えて、実は分からないところで、少しずつバージョンアップを続けているからだと思っています。定期的に新しい作品や施設をひっそりと作り続けていますし、来るたびに新しい発見がある状態を意識してきました。もちろん20代の時に訪れるのと、30代の時に訪れるのでは琴線に触れる箇所も変わると思います。
場所自体も少しずつ更新され、同時に訪れる本人自身も少しずつ更新されるので、来る度に新しい発見があるのだと思います。ちなみに、ベネッセアートサイト直島は、2025年5月に直島新美術館を開館しました。
もう一つ、私たちの中で明確な基準として、作品はグローバルで圧倒的にトップクオリティのもの、と決めています。合議制で妥協したり、予算を理由に「このくらいでいいか」と落としどころを探りがちですが、私たちは「それならやらない」という判断をしています。本当に良いと思えるものだけを制作し続け、発信している点は、直島の活動のユニークさにつながっているのかもしれません。
それと、分かりやすく「新しい作品ができました」と打ち出すよりも、できるだけひっそり、こっそり新しい活動を重ねているのも理由の一つかもしれません。大きく告知して消費されるより、来訪者が歩きながら「あれ、こんな作品あったかな」と気付くような更新の仕方のほうが、直島には合うと思っているからです。
そういう小さな更新を積み重ねることで、結果として支持され続けているのだとしたら、意義深いことですね。
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