販売実績ゼロなのに、三越が動いた 街のケーキ店「看板商品」開発の裏側(2/4 ページ)

» 2026年01月17日 07時30分 公開
[熊谷紗希ITmedia]

地元の人には愛されるが……

 看板商品開発の舞台裏を紹介する前に、まずはここ数年にわたってガトータツミヤが取り組んできた商品開発を振り返りたい。

 山本氏は「当店ではショートケーキなどの定番だけでなく、オリジナル商品も多数販売しています。バニラを主役にしたタルト商品の『タルトバニーユ』は期間限定商品だったのですが、お客さんに支持されて定番商品に仲間入りしました」と話す。

ガトータツミヤの店内。多数のケーキが並ぶ(画像:ガトータツミヤ提供)

 地元の客に愛される商品は生まれるものの、そこを超える新しいファンや販路の拡大には課題を感じていた。

 その課題を踏まえて、同年10月にあんずを使った新商品「杏バターペースト」(2450円〜)と「杏マーマレード」(2200円〜)を応援購入サイトのMakuakeで発表。10万円の目標金額に対し、購入総額は18万9450円と、目標金額の189%を記録した。

 この試みは成功したが、そこを起点に店舗への来店やオンラインでの商品購入といった流れを作るのは難しかった。単発で終わってしまう”点”での施策をどう”線”にしていくか、頭を抱えていた。

Makuakeで展開した「杏バターペースト」(画像:Makuake公式Webサイトより)

 「試行錯誤を重ねていたものの、2023年ごろから店の販売も芳しくない状況になってきました。店のスタッフと課題や商品について話し合う中で話題に上がったのが、長年作っている『バタークリーム』だったんです。『このクリーム、おいしいけど伝わっていないよね』という話になりました」(山本氏)

 バタークリームは、バタークリームは、主原料であるバターに砂糖を加え、空気を含ませて仕立てたものを指す。一般的に、乳脂肪分が高く、コクのある重めの口当たりになりやすい。一方で、ガトータツミヤのバタークリームは特殊な製法で作っており、乳脂肪分が低く、軽い食感が特徴だという。これまで商品の一部としてバタークリームを使用することはあったが、バタークリームを主役にした商品は開発してこなかった。

 山本氏は「ケーキ店を経営していますが、生クリームがあまり好きではなくて、ケーキも試作品程度しか食べないんですよね。そんな中で唯一食べたいなと思うのが、フランス産の高級バター『エシレ』のバタークリーム。うちの店で超高級バターを使えるわけではないですが、口になじむ感じはうちのバタークリームでも大事にしたいなと考えて作っていました」と話す。

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