「バタークリームを使った看板商品を作り、それを起点に新しい顧客や販路を獲得したい」という思いで、山本氏が頼ったのが「岡崎ビジネスサポートセンター」(以下、オカビズ)だ。岡崎市が運営する同センターは、お金をかけるのではなく、アイデア勝負で売り上げアップを目指すような支援を手掛けている。
2024年3月、山本氏はオカビズを訪問。その際、試作品として羊羹(ようかん)のような棒状に形成したバタークリームを持参した。オカビズのセンター長の高嶋舞氏はガトータツミヤのバタークリームを試食し、その軽い食感に驚いたという。
山本氏からバタークリームのこだわりをヒアリングし、高嶋氏は「バター好き」にターゲットを絞って売り出す戦略を提案した。
「近年、バター自体を楽しむ消費者が増えてきています。エシレバターの人気も高いです。加えて、最近のヒット商品の傾向として、食べ物の食べたい部分だけを抜き出した、偏愛商品をよく目にします。メロンパンの皮だけの『メロンパンの皮焼いちゃいました。』や、ドン・キホーテの『偏愛めし』などが代表例です。こういった背景を踏まえて、バターサンドのクッキー部分を抜いた『バタークリームをそのまま食べる』という商品を提案しました」(高嶋氏)
高嶋氏からは新商品の方向性だけでなく、形状や味についてのアドバイスもあった。
「私は棒状のバタークリームをスライスして食パンなどに乗せる食べ方を想定していましたが、オカビズさんから手が汚れずにつまめるものが良いというアドバイスをいただいたので形状を考え直しました。また、味もプレーンだけでなく、何種類か作ってみることにしました」(山本氏)
オカビズのアドバイスを踏まえて、2024年6月に山本氏は新たな試作品を完成させた。バターは温度によって性質が変わりやすく、空気を含んだバタークリームは特に温度変化の影響を受けやすいため、食感を保つ形状や保存方法の検討に苦労したという。
バターサンドのクリーム部分をそのまま抜き出したような厚みのある見た目で、直径は500円玉ほど。味は塩キャラメル、カシスベリーなど6種類を用意した。
改良を加えた試作品を携え、再度オカビズを訪問。試食したスタッフからの評判も高く、商品としての手応えを感じたという。商品の改良に加え、ネーミングについてもオカビズと議論を重ねた。
「食べるバター」などのシンプルな案も出たが、高嶋氏の「脂質などを気にしている女性からすると、『食べるバター』は抵抗感を覚えるかもしれない。バターサンドのクリーム特化というターゲットに刺さる方向性で考えるのはどうか」という意見を踏まえ、「バターサンドのバタークリームだけいっとく?」に決まった。
価格は、1箱12個入りで3600円(税抜き)。1個300円は街のケーキ店の商品と考えると高い印象を受けるが、価格はどのように設定したのか。
「オンラインで商品を販売している友人に相談したところ、価格を低くしすぎてはいけないと言われました。オンラインで商品を購入する人にとって、価格は商品の質を判断する一つの軸であり、安すぎると『変なものが使われているのではないか』と疑われるとのことでした」(山本氏)
試作品も出来上がり、ネーミングやデザイン、価格も決まり、販売までの道筋が見えてきた。販路については、当初オンラインでのみ販売する予定だったが、急きょ名古屋栄三越での取り扱いも決まった。
老舗ケーキ店といえど、新商品がいきなり三越に並ぶことはめずらしいだろう。どのような経緯があったのか。
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