課長の部下は、いずれも入社3〜5年目の若手営業担当である。
ある日、そのうちの一人が「営業力を強化したいんです」と深刻な表情で相談してきた。課長は真剣に向き合い、30分ほど時間を取った。
「行動の量を変えたらどうかな?」
「ターゲティングの仕方に問題があるんじゃないか?」
課長がいくつか提案すると、部下は困った顔をした。
「はい……。そうはいっても、なかなか難しいんですよね……」
課長は別の角度から提案した。しかし、やはり反応は鈍い。そして話が進むうちに部下は徐々に愚痴っぽくなってきた。
「売り上げが上がらないのは、結局商品の問題だと思うのですが……」
「売上目標が少し高すぎるのではないでしょうか?」
「どうして私はあのエリアの担当なのでしょう?」
課長は内心ため息をついた。しかし、そういうこともあるだろうと思い、その日は「頑張ろう」と励まして終わらせた。
問題は、その後だった。数カ月たち、同じ部下がまた「新規開拓が苦手で……」と相談してくる。以前の提案は何一つ試していない。さらに、他の2人の部下も同じパターンだった。
これは、言葉としては「相談」だが、実態は「高度な愚痴」というケースである。
高度な愚痴とは、相談という体裁をとりながら、実際には解決を求めていない状態のことだ。「相談」という言葉を使うことで、相手は真剣に応じてくれる。しかし、本人には変化のコストを引き受ける覚悟がない。だから、何度同じ話をしても、何も変わらないのである。
では、どう見分けるか。ポイントはシンプルで、相手が「変化のコスト」を引き受ける覚悟があるかどうかである。以下、具体的な見分け方について解説する。
本気の相談をしている人は、こちらの問いに対して具体的に返してくる。
「いつから?」
「誰が関係している?」
「これまで何を試した?」
こうした質問に対して、状況を整理しようとする姿勢が見えると、本当に問題を解決しようとして相談しているといえる。
一方、単なる愚痴の場合は別だ。「もう全部がダメなんですよ」「相手が悪いんです」と、抽象的・感情的・他責に戻る。問題を構造的にとらえ、要素分解しようとする姿勢が見えない。
相談は構造化に耐える。愚痴は構造化を拒む。ここはとても明確な境界線だと思う。
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